第4回 絶滅危惧種ツシマヤマネコに迫るこれだけの危機

 日本の絶滅危惧種の野生復帰計画は、2005年のコウノトリの放鳥で本格的に幕を開けた。

 以降、2008年からは佐渡島のトキが加わり、2010年には沖縄のヤンバルクイナでも再導入を見越した飼育繁殖施設が完成した。また、ニホンライチョウは今年(2017年)、乗鞍岳で採取した野生の卵からの孵化に成功するなど、将来の野生復帰を見据えた繁殖計画が進みつつある。

2015年3月にヤンバルクイナ保護増殖事業で繁殖に成功した生後3日目ほどのヤンバルクイナのヒナの映像。羽山さんが理事を務めるNPO法人「どうぶつたちの病院 沖縄」は、環境省の飼育下繁殖計画の実践機関として、ヤンバルクイナの飼育下繁殖の研究および生息調査を行っている。

 すぐに気づくように、これらはすべて鳥類だ。

 では、哺乳類はどうだろう。

 絶滅地域への「再導入」や、野生の個体群への「補強」のために、野生復帰を見越した準備が具体的に始まっている種はどれくらいあるのだろか。

 そう考えた時、もっとも先行しているのが長崎県対馬のツシマヤマネコなのである。羽山さんも、かなりの期間にわたって、ツシマヤマネコの保全増殖計画にかかわっている。

「ツシマヤマネコはパイロットしての役割があると思います。僕は、現地に環境省の対馬野生生物保護センターができた後、2001年からかかわってきました。僕の研究室の卒業生がそこに赴任したんですね。それで夏休み、学生と一緒に遊びに来ませんかと言われて、遊びに行ったところ、『ここは遊びに来るところじゃありません』って保護官に怒られて。じゃあ何か調査の手伝いをしますよと、糞を探したり、地域の人たちの話を聞いたりしました」

 まず、ツシマヤマネコについての基本情報を整理しておこう。生き物としての、姿形の特徴は連載の1回目に見たが、彼らが「絶滅危惧」とされる背景について。

日本の絶滅危惧種の保護や野生動物の管理について最前線で活躍してきた羽山伸一さん。ツシマヤマネコとのかかわりも長い。
[画像のクリックで拡大表示]