グーグルマップも誤記、現代人を欺く「存在しない島」

「誰かが島を捏造した可能性は低いでしょう」と英国地図学協会のダニー・ドーリング会長は2012年の記者会見で答えている。「可能性が高いと思われるのは、島の発見時に記録された位置が間違っていたということです。周辺海域のどこかにこの島が実在していたとしても、私はおどろきません」

 サンディ島は現在、グーグルマップからは姿を消しているが、いまだに「セーブル島」や「サブル島」の名で記載されている地図が存在する。

ナショジオの地図にも登場した幻の岩礁

 もう一つ、21世紀の地図に出現した小さな幻の島を紹介しよう。ナショナル ジオグラフィック協会の地図にも掲載された「マリア・テレサ礁」だ。

 1843年11月16日、米マサチューセッツ州ニューベッドフォードの捕鯨船マリア・テレサ号のアサフ・P・テイバー船長は、波間に見え隠れする岩礁を目撃し、位置を記録した。これがマリア・テレサ礁として、地図に掲載されはじめる。発見した船長はほかにいなかったが、マリア・テレサ礁は地図から抹消されることなく、生き残り続けた。船に危険を知らせる情報を消す責任を引き受ける者は、誰もいなかったのだ。

ナショナル ジオグラフィックのために作成された1921年の地図。赤枠で拡大した部分にマリア・テレサ礁が載っている。付近にあるエルネスト・ルグベ岩礁、ジュピター礁も実在しない
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 1966年にはアマチュア無線雑誌『CQアマチュア無線』に、アマチュア無線愛好家のドン・ミラーがマリア・テレサ礁から生放送の電波を送ったとする記事が掲載された。だが、この記事が出る前の1957年に行われたマリア・テレサ礁の調査では何も発見されず、マリア・テレサ礁は実在しないことが世間の常識になっていたため、ミラーは冷笑を浴びた。

 その後、ニュージーランドの海洋調査船HMNZSトゥイ号が、マリア・テレサ礁があるとされた海域の調査を実施。水深は約5000メートルであることが判明した。だが、国際水路局が1978年に発行した海図2683番にはマリア・テレサ礁が掲載されている。1983年に国際水路局はマリア・テレサ礁の位置を計算し直して、西経151.13度から西経136.39度に修正した。

 地図でマリア・テレサ礁は、同じ海域にあるという数々の岩礁、例えばジュピター礁やワチュセット礁、エルネスト・ルグベ岩礁などと一緒に描かれていることが多い。これらはすべて実在しないが、最新の地図にも時おり姿を見せている。

 例えば、エルネスト・ルグベ岩礁は2005年発行のナショナル ジオグラフィック世界地図に掲載されていた。2016年まではグーグルマップでも、南緯35度12分、西経150度40分のところに表示されていた。

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