もはや海の珍獣図鑑! 16世紀の「カルタ・マリナ」

オラウス・マグヌスによる「カルタ・マリナ」の一部。1539年に発行されたこの地図には、さまざまな海の怪物が描かれている

 中世の古い地図や海図には、奇妙な生き物が描かれていることが多い。その世界は、冒険映画やロールプレイングゲーム(RPG)のキャラクターにも似た珍獣たちであふれているのだ。一見、ただの挿絵のように見えるが、巨大なクジラやウミヘビが船を襲っていたり、巨大なザリガニが人間を食べようとしていたりと、恐ろしい描写も少なくない。これらの怪物は、いったい何を意味しているのだろうか。

 ナショナル ジオグラフィックの書籍『世界をまどわせた地図』は、こうした怪物についても取り上げている。同書は、神話や伝承、あるいは探検家の間違いや嘘などから生まれた「幻の世界の地図」を紹介する本だ。幻といっても、当時の人々には信じられていた世界であり、それゆえに地図にも描かれていた。前述した怪物たちも同様である。かつて人々が信じ、恐れていた怪物たちの姿が、地図に描かれているのだ。

美しく奇妙な海の怪物が勢ぞろい

 豊かな想像力で描かれ、絶大な影響力を誇ったオラウス・マグヌスの北欧地図は、現在確認されている限りでは2枚しか残っていない。地図の名前は「カルタ・マリナ」。1539年に発行され、9枚の原版から印刷された地図は125×170センチにもなる。カルタ・マリナの海には、美しくも奇怪な生き物があちこちに描かれている。

「カルタ・マリナ」の全図。125×170センチもの大作だ
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 オラウスは怪物だらけの海を作るために、船乗りたちから話を聞いたり中世の動物寓話(ぐうわ)を読んだりするなど、民間伝承を広く調べて情報を集めた。なかでも有名なのは、1555年にローマで発行された彼の著作『北方民族文化誌』だ。あまり現実的とは思えない描写も混じっているが、オラウスの意図は海洋生物に関する科学的な知識を正確に世に広めることにあった。

 もちろん、登場する生き物のなかには、実在の生物の姿をねじ曲げたようなものもあるし、神話にしか登場しないようなものもある。だが、このような怪物たちを16世紀の船乗りたちは信じ、恐れていたのだ。以下、カルタ・マリナに登場する怪物の一部を紹介する。

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