17世紀の学者アタナシウス・キルヒャーによるアトランティスの地図。アフリカとアメリカのちょうど真ん中にアトランティスがあるとした。
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 過去に姿を消した伝説の島は数多いが、「アトランティス」ほど名高く、人々の冒険心を駆り立ててきた島はないだろう。ナショナル ジオグラフィックの書籍『世界をまどわせた地図』は、かつて存在すると信じられていた島や土地、国などを、当時の地図や記録を通じて紹介する本だが、その中でも当然、アトランティスについては取り上げている。

哲学者プラトンの著作に登場

 「空想物語ではなく、本当にあった話」とされる最初のアトランティスの記録は、あの偉大な哲学者プラトンの著作にある。プラトンが紀元前360年頃に書いた対話篇『ティマイオス』と『クリティアス』の中に、アトランティスに関する詳しい記述があり、「リビアとアジアを合わせたよりも大きい」と紹介されている。

 またプラトンは、彼の時代の9000年前に古代アテナイ人とアトランティス人の間で繰り広げられた大戦争についても語っている。紀元前1400~1600年頃に大噴火によって滅びたティラ島(サントリーニ島)にヒントを得たとされているアトランティスの物語を、プラトンは強大な国々の傲慢さを皮肉った寓話(アレゴリー)として用いたのだ。

 プラトンの弟子だったアリストテレスはアトランティス伝説を作り話として一蹴したが、ギリシャ学術院に所属していたクラントルは歴史的事実だとして熱心にプラトンを擁護した。アトランティスの物語が事実に基づいているかどうかをめぐっては白熱した議論が交わされた(そして、一部では現在でも議論が続いている)。

W・スコット=エリオットの『アトランティスと失われたレムリアの物語』(1925年)に描かれた全盛期のアトランティス。
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 『ティマイオス』の中でプラトンは、「ヘラクレスの柱(ジブラルタル海峡の入口)と呼ばれる海峡の前にある」強大な力を持った島が、ヨーロッパとアジア全体の支配に乗り出したと書いている。この侵略に対する古代アテナイ人の様子をプラトンは次のように記している。

「全人類の中でも、アテナイ軍の強さと勇ましさは際立っていた。(中略)侵略者を打ち負かして勝利をおさめ、支配下におかれていた者たちを救い、ヘラクレスの境界(地中海世界)の中で暮らす者たちすべてを自由の身にした。しかしその後、大地震と大洪水が起こった。悪夢のような一昼夜のうちに戦える男たちは全員が大地に飲み込まれ、同じくアトランティス島も海の底に姿を消した」

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