第1回 いったい嘘ってなんだろう―嘘の心理学、事始め

 都内の池袋駅から東武東上線急行に乗って、20分と少しでふじみ野駅に着く。

 駅前ロータリー近くから無料スクールバスに乗れば、10分もかからずに文京学院大学ふじみ野キャンパスだ。

 案内された建物には、庭に面した窓から光が差し込む天井まで吹き抜けの「アトリウム」があって、まずは、とても明るい印象を受けた。

正面玄関を過ぎたところにある「アトリウム」。学生が集うオープンスペースだ。(写真提供:文京学院大学)
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 光というと、なんとなく頭の中で、「真実」とかたく結びついている気がする。たとえば、知られざる事実を明らかにすることを「●●に光を当てる」と表現したりもする。いや、「明らかにする」という表現自体、「明るくする」こととつながっている。

 じゃあ、光に対する「陰」や「影」とはなんだろう。それは、「嘘」「虚偽」「欺瞞」といったものだろうか。

 とっさにそんなことを考えた。

 というのも、ぼくがこのキャンパスを訪ねた理由が、まさに「嘘の研究」について話を伺うためだったからだ。

「嘘」を専門分野とする心理学者、村井潤一郎教授。日本には決して多いとは言えない嘘の心理学の専門家だ。より正確にいうと、「欺瞞的コミュニケーション」の研究を90年代から積み重ねてきた。

 フェイク(偽)ニュースだとか、オルタナティヴファクトだとか、とにかく、虚実の境界があいまいになりがちな2017年において、いったい嘘ってなんだろうという水準で、一度、立ち止まって考えておくべき必要があるのではないか。そのような目当てを持っていた。

本誌2017年6月号でも特集「なぜ人は嘘をつく?」を掲載しています。Webでの紹介記事はこちら