第5回 「男脳」「女脳」のウソはなぜ、どのように拡散するのか

男女における脳内部でのつながりの強さの違いを示した図。男性のほうがコネクションが強い組み合わせを黄色、女性のほうがコネクションが強い組み合わせを青色で示している。これから何が言える?(画像提供:四本裕子)
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「先にも言いましたが、最近の男女差研究って、スキャンして見たら、この部分が男女で形態的に違うみたいなことはもうないんです。では、何が違うのかというと、脳内部でのつながりの強さなんです。私たちの研究では、脳の中の場所を84カ所に取り分けて、そのつながりの強さの違いを、84×84の組み合わせで考えてます」

 これは四本さんが自家薬籠中の物とするfMRIの面目躍如たる研究だ。脳の形態も血流もすべて考慮して、84×84の組み合わせ(正確には2で割って3500くらいの組み合わせ)を総当り的に見ている。様々な部位が、別の部位とどれくらい強くつながっているかを丹念に確かめ、その結合の強さで色分けすると、ちょっと訳のわからない模様が浮き上がってくる。

「84×84の組み合わせの表を男女別に作って、女性と男性の差を計算してあるんです。84カ所、それぞれ脳の場所の名前がついています。それで、皆さん、関心があるのは、こういった組み合わせで何が言えるだろうってことだと思うんですけど、それはわからないです。ただ、こういったもののパターン認識は、最近の機械学習が得意なので、パターンの違いを学習したAIに分類させると、約92%の精度で男女を見分けることができる、くらいのことは言えるんです。でも、これって、たぶん男女じゃなくても、これくらいの差は出るんですよね。例えば、20代の人と30代の人、というふうに比べてもやっぱり差はでると思います」

 違いはある。見分けることも9割以上できる(1割は間違う)。

 男女という分け方だけでなく、年齢差やほかの分け方でも、ネットワークの結合パターンの違いは見えてくる。

 今わかっているのは、それくらいだ。

 ここから新たな神話を引き出すというような話ではないらしい。

 やがて、男女の認知とか行動とかの違いとの関係が分かる日が来るかもしれないが、それも、おそらくは「ローテーション課題」の場合と同じで、集団としての分布の違いは言えても、個人の差をはっきりと語るものにはならないだろう。

 それでも! 相変わらず、神経神話は量産され続けている。四本さんは、同じくfMRIを使って、男女の脳のネットワークに統計的な差を見つけたとする論文が、その後、どのように伝わっていったか追跡した論文(ややこしい!)を見せてくれた。