第6回 唯一オランウータンと心が通ったと思ったとき

 進化の歴史の中で、ぼくたちの隣人である大型類人猿オランウータンが、合わせ鏡のようにぼくたちに見せてくれるトピックとして、「少子化」やら「孤独な子育て」といったきわめて現代的な問題がある、と久世さんは言う。連載の1回目で触れたし、その後も通奏音のように背景に響いていた。

久世濃子さんも二人の幼いお子さんの母親だ。
[画像のクリックで拡大表示]

 オランウータンは、「環境が良ければめいっぱい繁殖する」よりも、「少なく産んで確実に育てる」方式の先達(かもしれない)。また、今の日本の子育て世代で、母親が家にいる場合、ただ一人で子どもの面倒を見るような密室的な孤独な環境になってしまいがちなのは、「ヒトのオランウータン化」と言えるかもしれない。

「オランウータンって、まさに孤独な子育てをしてるんです。ほかの大人と誰とも会話することなく、ただただ子どもとだけ一緒にいるって、人間にとってはものすごくつらいですよね。でも、オランウータンは全然つらくなくて、それが日常だし、一生でもあるんです」

 孤独が日常で一生。フィールドで会いやすいのは、比較的行動範囲が狭いメスだけれど、メスにとっては、「孤独な子育て」を何年かごとのサイクルでまわしながら暮らしていくのが、まさに「一生」だ。ヒトだったら、本当に頭がおかしくなりそうな状況だが、オランウータンのお母さんたちはまったくつらそうではないという。オランウータン化しているヒトと、どんなところが違うのだろうか。

[画像のクリックで拡大表示]

「自分も子どもを育ててみて思うのは、親が違うというより子どもが違うんですよね。オランウータンの子どもって騒がないし、要求しないし、かわいいだけで。あれだったら私もできると思いました。だから、お母さんの問題じゃないです。人間の赤ちゃんの性質とか行動とかが、お母さん一人だけで子育てするようにできていないんです。基本的に」

 思わず、大爆笑。

「ヒトのオランウータン化」といっても、少子化する傾向は共通するものの、孤独な子育てはヒトにはそもそも無理! という見解なのである。

本誌2016年12月号でも特集「オランウータン 樹上の危うい未来」を掲載しています。Webでの紹介記事はこちら。フォトギャラリーはこちらです。