第3回 野生動物では極めて異例、オランウータンの少子化の謎

 ボルネオ島ダナムバレイは、島の北東部を流れるセガマ川源流の原生林地帯だ。およそ440平方キロメートルが、ダナムバレイ森林保護区域として、保全の対象になっている。

 年平均気温は28℃、年間の降水量は3000ミリを超えないくらい。生物多様性のホットスポットであるボルネオ島だから、本当にたくさんの種類の生き物が住んでいる。大きいものはボルネオゾウがいるし、今回の関心の的であるオランウータンは、このエリアに500頭くらいはいるのではないかと推定されている。

ボルネオオオカブト?(写真提供:川端裕人)
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 2013年にフィールドにいる久世濃子さんを訪ねた際、ぼくが思わず感動したのは、図鑑でしか見たことがない昆虫がごく普通に現れることだ。三本角の大きなカブトムシ(ボルネオオオカブトだと思うけれど、確信はない)、巨大なナナフシ、姿は美しいけれど動きはゴキブリそっくりのバイオリンムシ等々。オランウータンに会う前に、まずそれらが目に入ってきて、純粋に驚き感動した。さすがボルネオ! だ。

 久世さんは、2004年-05年の時期にダナムバレイの野生オランウータン調査地を拓き、現在に至るまで維持している。

 より正確に言えば、2004年、久世さんの盟友、金森朝子さん(現:京都大学霊長類研究所・思考言語分野研究員)が、博士研究のためにまず調査を始め、翌05年、同じボルネオ島にある保護施設での調査を中心に博士論文を仕上げた久世さんが合流し、本格稼働した。

 それでは、ここでの研究を見ていこう。

「最初は採食生態なんです」と久世さんは言った。

 いつ、どこで、なにを、どのように、どれくらい、食べているのか。採食生態というのは、平たく言うとそういうことだ。

本誌2016年12月号でも特集「オランウータン 樹上の危うい未来」を掲載しています。Webでの紹介記事はこちら。フォトギャラリーはこちらです。