第1回 オランウータンと「少子化」と「孤独な子育て」

 オランウータンと呼ばれる動物のことは、小さな子どもでも知っている。

 動物園にもいるし、ネットには動画もたくさん出回っている。絶滅が危惧されている種なので、自然保護関連のニュースで報じられることも多い。

ボルネオ島、ナダムバレイの野生のオランウータン。(写真提供:川端裕人)
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 ぱっと見には、「赤茶色の毛におおわれた、大きなお猿さん」だ。

 生息地は東南アジア、ボルネオ島とスマトラ島で、現地の人たちが「森(ウータン)の人(オラン)」と呼んでいたのが語源だとか。

 単にお猿さんというのを超えて、ヒトに近い大型類人猿だから、ぼくらが一番身近に知っているニホンザルよりも、アフリカのゴリラ、チンパンジー、ボノボのほうが近縁である。

 体格といい、なんとなく思慮深げな表情といい、「森の人」という名は的を射ている。そして、とにかく赤ちゃんはかわいい! 抵抗しがたい魅力がある。ほかの大型類人猿についても言えることだけれど。

 そこで、大型類人猿に関心を持った子どもが大きくなり、やがて「オランウータンの研究をしたい!」と志したとする。

 それに対する常識的な助言は、「やめておけ」だ。

 アフリカのチンパンジーやゴリラに比べて、生息地がアジアだから、近くて便利、というふうに思っていると痛い目にあう。なぜか、というのはおいおい語るとして、それでも、やりたい、という猛者はいて、国立科学博物館人類研究部の久世濃子特別研究員は、まさにその一人。

 社会的な立場としては紆余曲折を経ながらも、研究はオランウータンまっしぐら! というキャリアを持つ。ちょうど21世紀になる頃にオランウータン研究を志した久世さんは、飼育下や半野生の研究で、基礎を固めつつ、ボルネオ島で野生のオランウータンの調査地を切り拓き、研究を積み重ねてきた。

本誌2016年12月号でも特集「オランウータン 樹上の危うい未来」を掲載しています。Webでの紹介記事はこちら。フォトギャラリーはこちらです。