第6回 「彗星ヒッチハイカー」と「氷衛星の中心への旅」

 NASAのJPLで研究生活を送る小野さんが、10年後、100年後を見据えた研究として取り組んだテーマのひとつに、「彗星ヒッチハイカー」がある。

 文字通り、彗星にヒッチハイクさせてもらって、燃料を節約しようというのが最初の発想だ。

「ボイジャーは太陽系の果ての天王星や海王星にまで行きましたけど、ただ近くを通り過ぎただけでしたよね。この前、ニューホライズンズという探査機が冥王星に到着しましたが、これも超高速でその近くを通り過ぎるだけでした。なぜかっていうと、減速して周回軌道に入るには莫大な量の燃料がいるからなんですね。そして、そんな量の燃料を積んだ宇宙船を太陽系の果てまで送ろうとすると、もう途方もなく大きなロケットが必要になるわけです。じゃあ、燃料を使って自力で飛ばなくても、何か別の天体に乗っかって連れて行ってもらえばいいじゃないかって」

NASAのジェット推進研究所JPLに勤務する小野雅裕さん。
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 小野さんの念頭にあった探査対象の「遠くの天体」とは、KBO、いわゆるカイパーベルト天体だ。20世紀後半の観測で、海王星より外側の太陽系外縁部には、たくさんの小さな天体があることが分かってきた。小さいながらも合算した質量は相当なものになり、太陽系の重要な構成要素であることも。それらをざっくりと呼ぶ名がKBOだ。小さいとはいっても、冥王星クラスのものはごろごろあって、中には冥王星より大きいものまである。冥王星も太陽系外縁のカイパーベルト天体として捉えるのが自然で、従来の惑星から、準惑星に分類し直された。つまり、今、成人している多くの人が学校で習った知識を書き換え、従来の太陽系観を覆したのが、KBOの発見だ。

 小野さんが燃料を節約して遠いKBOまで行く「乗り物」の候補として考えたのが彗星である。だから、彗星ヒッチハイカー。これは、ダグラス・アダムスのSF『銀河ヒッチハイク・ガイド』にかけてある。

彗星の多くは太陽系の外縁部のカイパーベルト(Kuiper Belt)からやってくると考えられている。(Image:NASA)
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