Episode3 船酔いノックダウンで、神のふところへ

 しばらくして、当たりがあった。
 この辺りは、リリースサイズが厳格な海域であるから、特に厳しく保護しているリンコッド(Ling cod、キンムツ)の幼魚が釣れてしまわないように、針の返しを潰した。
 そのため、普通サイズのロックフィッシュ(根魚)がかかったようだったけれど、何度も引き上げに失敗してしまった。
 一度水面辺りまで引き上げると、水圧で魚の内臓が口から飛び出してしまうようで、針から離れても、泳ぐことができずにプカプカと浮いてしまう。
 私は、その浮いた魚を網で拾う作戦に出た。
 が、これを高い木の上から狙っているヤツがいて、ひゅ~っと飛んできて、私の獲物をかっさらっていった。
 コンニャロ。イーグル(ハクトウワシ)である。

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 木の上に止まって静観している姿だけでもカッコイイのに、水面まで下降飛来して魚を足で掴む様は、勇猛で更にカッコイイ。
 と、見惚れてしまうのだが、こんなことでは、刺身定食が食べられない。

 しかしながら、私の釣り下手は、折り紙付きなのである。
 イーグルたちの胃袋を満たしてあげるばかりで、一向に、自給自足型刺身定食の夢が叶わなかった。
 結局、クルーの一人が何匹かを釣り上げて、その夢はあっさりと他力で叶ったのだけれど、私はこの旅で、絶対に大物を釣り上げることを誓った。
 その釣果は、刺身となり、蒸し魚となり、煮付けとなり、中骨の潮汁となって、私は大いに堪能することができた。
 人の釣った魚でも、美味いものは、美味いのだ。

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 その後船は、デソレーション・サウンドの迷路を抜け、対岸のバンクーバー島に渡ることになった。
 向かうのは、バンクーバー島北部の漁村、ポート・ハーディー。
 この先、しばらくは補給ができない海域になるため、ここで一旦、食料の追加と給油、給水をする。 
 ポート・ハーディーに到着すると、スキッパーボブが言った。
「ハンバーガーが食べたかったら、当分、ここが最後のハンバーガーの地だよ」
 ここを過ぎると、人気のないフィヨルド海域の奥地へと進むことになる。
 ハンバーガーには特に興味は無いが、当分の間、北米の文明的食べ物が口にできないと知ると、なぜか食べたくなるもので、私たちはここでハンバーガーにがぶりついた。

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