Episode6 冒険家マッケンジーの謎の終着点

 そして次の朝も、私たちは「日本人なら、朝風呂でしょう」と言わんばかりに、海岸露天風呂で体をほぐしてから出航した。
 前日、ユーコット・ベイまで戻ってしまった分を、取り戻すために、長距離を走ることになる。
 向かうは、海岸に面した大きなダムを有するオーシャン・フォールズという集落地だ。
 このダムはかつて、この周辺の森を伐採して操業していた製紙工場の電力を補い、街は労働者で賑わっていたが、今はゴーストタウンのようになっているという。
 その情報を得るべく、この辺りの海域を航行したことがある人物が個人出版しているガイドブックをペラペラとめくっていると、小さな記事を見つけた。
 そこには、こんな内容が書かれてあった。
 アレグサンダー・マッケンジー、旅の終点碑の場所、その場所の緯度と経度……。
「ん? マッケンジー?」

 実はこの名前は、川旅好きのカヌーイストたちの間では、よく囁かれる名前だ。
 私はアラスカ・ユーコン川をカヌーで下る旅をしたことがあるが、カナダ北部を流れるカナダ最大の大河マッケンジー川もまた、ユーコン川同様に、カヌー下りたちの冒険と憧れの川なのである。
 1789年に、マッケンジー自らがカヌーで下ったことから、後に名が付けられたのである。

 アレグサンダー・マッケンジーという人物は、キャプテン・クック同様に、18世紀を代表する偉大な冒険家の一人である。
 彼は、当時北アメリカ東海岸一帯で盛んに行われていた毛皮貿易を、北アメリカ西部へと進出させるために、大陸内陸部から、太平洋へと出る陸路を探っていた。
 太平洋に流れ出る川を探すために、実際にカヌーで下った川が、現在のマッケンジー川という訳だ。
 しかしながら、その川は、彼の期待に反して、太平洋ではなく、北極海に流れ出てしまったために、彼は、この川を「期待はずれの川」Disappointment Riverと名付けている。
 後に、マッケンジーの功績を称え、マッケンジー川と名前を変更したのは、同じ時代、カナダ北極圏沿岸の北西航路を開拓するために船出し、乗組員全員死亡という最悪の結果をもたらしてしまった探検家ジョン・フランクリンだと言われている。