第3回 加速器界の革新的発明「新竹モニター」誕生秘話

新竹積OIST教授。
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 沖縄科学技術大学院大学(OIST)の新竹積教授は、世界がしのぎを削る「量子波光学顕微鏡」の開発ユニットリーダーであり、同時に海流や波を使った発電の研究を両建てで進めている。

 前者はまごうことなき物理工学から生物学(なにしろウイルスやDNAの立体構造を見ることができるようになる)などの革新へと繋がる最先端のテーマだし、後者も自然エネルギーという、聞こえはいいけれど実は困難が山積する分野に「野生の技術者」の本能むき出しで立ち向かうというような風情だ。

 楽しみながら苦労し、苦労しつつ楽しみ、探究を続ける新竹さんの研究スタイルの「波」に乗ってお話を伺ってきて、やっと、新竹さんが研究者として第一歩を踏み出すところまでやってきた。

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 最初のテーマは、修士時代のもので、熱電子銃の開発。昭和のSFみたい、とぼくは感じた。

「就職活動がそのころ、あんまり盛んじゃなかったから、大学4年生になると研究室に配属になるんですよ。それで、ちょうどヨーロッパから帰ってきた先生が、『おれ、イオン源をつくるから、おまえ熱電子銃つくれ』って言うんですよ、いきなり私に(笑)」

 熱電子銃というのは、書いての通り、何かの物質を熱することでそこから電子を飛び出させるものだ。一番身近な(身近だった)例は、テレビ受像機のブラウン管に使われていたものだろう。でも、新竹さんに託された研究は、もっと大電流で飛び出す沢山の自由電子が得られるもので、その時の目的は量子力学にまつわる実験だったそうだ。

「例えば、塩(しお)NaClは、水中ではNa+とCl-のイオンになってますけど、真空中で電子銃から出る強い電子ビームで照射すると、Na2+、Na3+、Na4+のようにたくさん電子が弾き飛ばされた多価イオンができるんです。これを加速器で加速し物質との相互作用を研究すると原子の励起状態の研究ができて、量子力学の検証ができるというふうな話です」

 そのためには、やはり電子を飛び出させる物質(熱電子放射材料、あるいはカソードとも呼ぶ)を高熱にしなければならない。この時は、東京の会社が、六ほう化ランタン(LaB6)というカソードを提供してくれた。今でも電子顕微鏡の電子放射源として活躍しているから、新竹さんはこの時点ですでに「顕微鏡」との縁が定まっていたのかもしれない。