第2回 自警団を隠れ蓑にする麻薬カルテル

――メキシコ北部の街、フアレスの治安回復。それが警察の改革とカルテルに立ち向かった市民の力によるという、本誌の記事内容のほかにも理由があると、前回言われましたね。

 現地のジャーナリストから聞いた話です。今年2月、ローマ法王のメキシコ訪問がありました。法王はフアレスにも訪れているのですが、メキシコの人々の間で「メキシコ国民としてではなく、キリスト教徒としての威信をかけて麻薬を浄化する」という機運が高まり、州警察や軍が麻薬カルテルの制圧に本腰を入れた。さらには2大カルテルの抗争が沈静化し、治安が回復したとのことです。

 ローマ法王が街に来るというのにドンパチはやってられない、ということでしょう。もちろん、記事にあるように警察と市民の努力もあったと思います。

――フアレスの治安回復が、ミチョアカン州の麻薬戦争に影響を与えたというのは?

 フアレスのあるメキシコ北部チワワ州と、そこに隣接する地域は「黄金の三角地帯」と呼ばれる、メキシコ最大の麻薬生産地です。一方、メキシコ中西部のミチョアカンは、メキシコ第2の麻薬生産地です。州警察や軍によるフアレス周辺の取り締まりが厳しくなり、北部地域の生産力が下がったため、麻薬の生産拠点がミチョアカンに移ってきたということです。

本誌2016年6月号の特集「メキシコ 悪夢から抜け出す街」は、激烈な麻薬戦争から治安回復を図ったメキシコ北部の街、シウダー・フアレスの物語。Webでの紹介記事はこちら