第5回 不思議な国バチカン

 バチカンは実にユニークな国だ。国全体がユネスコの世界遺産に登録されているのはここだけである。文字通り塀で囲まれたゲート付きコミュニティで、市国の入り口は真夜中には閉じられる。

 ここに泊まることが許されているのは、居住者の親兄弟だけだ。服装の決まりもあり、膝、腕、首元を隠すことは暗黙の了解、肌を露出した日光浴も禁止されている。さらにここでは、修道院のような静けさも求められる。

 この国では離婚は極めてまれだ。警備は厳重で、監視の目も厳しいが、犯罪者を収監する刑務所はない。にもかかわらず、人口当たりの犯罪率が世界で最も高いとされ、またアルコール摂取量も世界一とされる。一瞬、おやっと思うものの、ここが種々雑多な人間の集まる観光地であることに気付けば、当てにならない統計だと合点がいくだろう。

古典的な風貌のスイス衛兵

 バチカンで最も重要な住人は教皇だが、その教皇を1506年から守り続けているのがスイス衛兵隊だ。屈強な傭兵たちで、粋な身なりながらも武術に長け、銃器の専門知識もある。110人かそこらの衛兵たちは、その名の通り、みなスイス人である。

石畳の上を行進するスイス衛兵。その服装は極めて個性的で、ドラム奏者の黒い兜には黄色と黒の羽飾りがついている。(Photo by Dave Yoder / National Geographic)
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