第7回 湖底はまるでSFの世界

ダイブホールに飛び込み、これから水中世界への冒険に出かける。(Photograph by Klemens Weisleitner)
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 アンターセー湖での第1回目の潜水で自信を喪失しかけていた私に、次のチャンスが訪れたのは2日後のことだった。

 実は翌日も潜水する予定だったが、風が強すぎて延期となっていたのだ。水中にいるダイバーに地上の風は関係ないのだが、氷上でサポートをする側にとっては非常に過酷。寒い、通信機の声が聞こえない、転倒しないように氷上で立っているのがやっとという状況で1時間近く耐えなければならないからだ。最初の潜水でクタクタになっていた私は、心の中で密かにその強風を喜んだ。

潜行開始

 第2回目の潜水は、まずウェイト問題を解決することが先決だった。ウェイトをきちんと11kgにして浮力をチェックしなければならない。それが問題なければ水深20mの湖底まで潜り、そこから水深が浅くなる方向へ湖底に沿うように移動しながら、湖底の様子をじっくりと観察し、一眼レフカメラとビデオカメラで記録する。そうして次回以降の潜水で湖底の生物群集を採取するポイントや、生物群集の光合成を測定するポイントを決めるのだ。

 相変わらず緊張気味ではあったが、やらなければならないことを強く意識すると、不安と緊張よりも“よし、やるぞ!”という気持ちのほうが強くなった。手早く機材のセッティングを終え、マスクをつけると、私はためらいなく水中へスッと飛び込んだ。そのまま息を吐いて止めると、ちょうど水面くらいにあったマスク越しの視界は、ゆっくりと水中に沈み込んでいった。

「おお! 浮力はちょうどいいよ。今から潜行開始する」
「OK。安心したよ、グッドラック」

 通信マスク越しにデイルに告げ、そのまま氷の穴を降りていった。

 頭上の穴はどんどん小さくなっていく。目の前に見える氷の壁の内側には縦に長い不思議な気泡がいくつも入っていた。氷にできた不思議な縦模様の連なりが終わり、私は氷の下まで到着した。

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氷の穴の中。分厚い湖氷の内側には鉛直方向に線状の模様がいくつも連なっていた。
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