第41回 間違いだらけの「寝不足は太る」

 睡眠不足のシミュレーション実験には限界があって、摂食ホルモンの変化を見た研究の実験期間はせいぜい数日〜1週間程度。そのため、年単位の長期にわたって摂食ホルモンが短期実験のような高値や低値を続けるか疑う研究者も多いんだ。一般的に体のシステムは正常な状態を保とうとする強い力(恒常性維持機能)が働くので、睡眠不足で数日〜数週間程度は摂食ホルモンの異常が生じても、その後徐々に正常化するのではないかという意見も根強い。

 それに睡眠不足にしても普通は365日続くことはなくて、週末には寝だめをしたり、日によって違うよね。そのような睡眠時間の変動が摂食ホルモンに与える影響もほとんど分かっていないしね。

 問題は、睡眠時間が摂食ホルモンに与える影響は実験環境で調べた短期間のデータしかない、長期的な影響は不明ってことですね。

 その通り! さて、睡眠不足で(短期か長期か分からないけど)摂食ホルモンの変化が生じたとして、第二のステップ「摂食ホルモンの変化➡食欲増進」について考えてみよう。確かに実験で被験者を睡眠不足にすると摂食ホルモンの変化と同時に食欲が高まります。でも、両者の間に(相関関係だけではなく)本当に因果関係があるのか証明されていないんだ。食欲の調整に関わっているホルモンや神経は沢山あるからね。もしかしたら摂食ホルモンは脇役かもしれない。

 例えば、睡眠不足の被験者に美味しそうな食事の画像を見せると食欲や快感、情動などに関連する脳部位が活発になることも明らかになっている。また興味深いことに睡眠不足時には低カロリー食よりも高カロリー食、特に炭水化物や脂質リッチなメニューの画像にこうした部位が強く反応するけれど、その変化は必ずしも摂食ホルモンの濃度とは関連しないんだ。

 僕の場合は食欲の決め手は朝の天気だな。朝イチバン、声高らかに鳴いた後の爽快さと朝飯の美味しさと言ったら!

 そんな話、今、関係ないだろ!

 いやいや、気分と食欲の話にも一理あるよ。例えば抑うつ傾向のある人の一部は過食や体重増加もみられるし、極端な例では冬季うつ病の過眠、過食、体重増加が有名で、このコラムでも以前も取り上げました。長時間睡眠で体重が多い人々(U字型の右端)の中にはこのような抑うつ者が多く含まれていると考える研究者もいるんだ。

 へへん! ヒツジはニワトリにとって一番鶏になることの価値が分かってないんだよ。順番は序列で決まってて雄鶏にとって大変名誉なことなんだ。

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