第41回 間違いだらけの「寝不足は太る」

 私はともかく、サル界でも肥満は問題になっています。大阪府堺市大浜公園のサル仲間(編集部注:アカゲザル)は「メタボ猿」なんて呼ばれて、中には糖尿病になってしまったものまでいます。ですから、睡眠と肥満の関係にも大いに興味があります。

 大浜公園のサルは観光客が与える餌が原因らしいけどね。人もサルも肥満の悩みは尽きないね。今回はオブザーバー参加と言うことでゆっくり見学していってください。

 さて、多くの疫学調査からはっきりしているのは、睡眠時間と肥満は一般的に「U字型」の関係にあるということ。つまり、睡眠時間が短くても長くても肥満傾向が強くなる(図ではBMIが高くなる)ことが分かっているんだ。

 短時間睡眠が肥満リスクを高めることは横断調査だけではなく、コホート研究でも示されていて、両者の関係はまず間違いないと考えられている。ちなみに、コホート研究とは前方視研究とも呼ばれ特定の集団を長期間にわたって追跡調査するため横断調査よりも信頼度が高いんだ。

米国ウィスコンシンの住民を対象にしたコホート調査では、睡眠時間の長さとBMIの関係が報告されている。BMI=体重(kg)÷(身長(m)×身長(m))は日本人では25以上、米国人では30以上が肥満に相当する。図中の数値は性別や年齢等で補正してあるため通常のデータとの比較はできないが、睡眠時間との関連を見て欲しい。(Taheriらのデータから作成)(画像提供:三島和夫)
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 長くても短くてもBMIが大きくなるなんて、なんか変。本当に関係しているのかなぁ?

 トリ君、真っ当な疑問だね。実はこのようなU字型の関係は「睡眠時間とうつ病罹患率」、「睡眠時間と糖尿病罹患率」、「睡眠時間と寿命」など他のさまざまな指標でもみられるんだ。結果は同じでも短時間睡眠と長時間睡眠は異なるメカニズムで働いていると推測されているよ。長時間睡眠のメカニズムについては別の機会に譲るとして、今回は睡眠不足が体重増加を引き起こすメカニズムについて考えてみよう。

 さまざまな方面から研究が行われているけれど、最も精力的に研究されたのは「睡眠不足➡摂食ホルモンの変化➡食欲増進➡肥満」というステップ。雑誌なんかでもよく取り上げられているよね。

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