第40回 帰ってきた断眠療法―眠らずにうつ病を治す

 先回、不眠やリズム障害などの睡眠問題がうつ病の発症や再発のリスクを高め、治療の足を引っ張るという話を紹介した。ナショジオのfacebookページでも、「自分もうつ病の不眠で苦労している」「うつ病を治すためには眠ることも大事なのですね」など多くの嬉しいコメントをいただいた。

 そして(それにもかかわらず?)今回のテーマは、患者さんを眠らせないことでうつ病を治療する、人呼んで「断眠療法」である。このどんでん返しは何なんだ! と呆れている読者もおられるかもしれないが、歴史も実績もある有名な治療法なのでうつ病と睡眠つながりで是非ご紹介したいと思う。

(イラスト:三島由美子)
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 一般的に「毒にも薬にもならない」ものは役に立たないことが多い。「毒にも薬にもなる」ものには、酒をはじめ、麻薬(鎮痛薬)やボツリヌストキシン(ボツリヌス菌が産生する毒素でボトックスなどの商品名で筋痙攣性疾患に用いられる)など医薬品として活用されているものが幾つもある。

 この連載でも何度もご紹介したように、眠らないことは多くの場合は毒になる。だが、時には薬として働くこともまたある。断眠療法はその典型例であるし、震災や戦争など危急時には眠気がすっ飛んで長時間にわたり自己防衛が可能になるのも一種の効用と言えるだろう。

 本題に入る前に大事な注意点を1つ。今回ご紹介する断眠療法は短期間(1晩のみ、もしくは1週間に2回など)に限り、医師の管理下で実施する「医療」である。自己流で試すのは危険。年配の方は血圧その他、心身への負担があるし、双極性障害(躁うつ病)の方は躁状態に移行してしまうことがある。

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