第61回 脳の掃除は夜勤体制

 数年前、最も権威ある科学誌の1つである「サイエンス」に、睡眠研究に携わる人々を唸らせた1つの論文が掲載された。それが今回のテーマである「睡眠中の脳内清掃システム」である。米国ロチェスター大学メディカルセンターの研究チームは、神経細胞へダメージを与えず3次元撮影や液体の流れが観察できる最新の顕微鏡(2光子励起顕微鏡)を用いて、それまで知られていなかった脳内の老廃物を流し出す一種の排水システムを明らかにしたのだ。

 この論文は神経科学に大きなインパクトを与えたが、いまだ他の研究施設から追試が出ておらず真偽は確定していない。またマウスを使った研究であり、人での検証はこれからである。けれども、最近になってさまざまな状況証拠がそろい、「本当らしい」となってきたので紹介しよう。

(イラスト:三島由美子)
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 ある試算によれば私たちの体は37兆個もの細胞から構成されている。細胞内では日々、変性したタンパク質などさまざまな老廃物が生じ、細胞外に排出している。また、細胞自体が毎日数千億個も死滅して老廃物と化す。

 本年度のノーベル生理学・医学賞を受賞した大隅良典博士の研究テーマであるオートファジーも、細胞内に生じた異常なタンパク質を分解して、その一部を再利用するシステムである。

 アルツハイマー病はアミロイドβと呼ばれるタンパク質の異常な蓄積が原因の1つであるが、神経細胞内からアミロイドβを排出する際にもオートファジーは深く関わっていることが明らかになっている。最近ではアルツハイマー病以外にも、オートファジーの機能異常がパーキンソン病など幾つもの神経変性疾患の発症に関わっているのではないかと疑われている。

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