第82回 枕が変わると眠れない、意外と大きな影響と対策

(イラスト:三島由美子)
[画像のクリックで拡大表示]

 旅先のホテルでなかなか寝つかれなかったという経験はないだろうか。

 観光地を歩き回って体は疲れているのだが何となく目が冴えて寝つけない。いったん寝ついても、夜中に何度か目が覚めてしまったなど、いつもと違う場所に泊まったらなんとなく不眠気味になる、そんな経験を繰り返す人がいる。いわゆる「枕が変わると眠れない」というタイプの人のことである。

 このような話をすると必ず、「いつでも、どこでも、すぐに眠れる」と胸を張る人がいるが、それは明らかな睡眠不足の徴候であって決して自慢できる話ではない。十分に睡眠がとれている人は消灯してから寝つくまでに10分や15分はかかるのが普通だ。

 それはさておき、若い頃から「枕が変わると眠れない」ことがしばしばある人は、睡眠だけではなく、うつ病や生活習慣病など心身の健康を損なうリスクが高まるという研究報告がある。一体どういうことなのだろうか。

 冒頭で紹介したように寝場所が変わっただけで眠りが浅くなるのは、脳の「覚醒度 alertness」が高まるためである。覚醒度が上がるとは簡単に言えば脳が睡眠に入りにくくなる状態をさす。例えば、普段は就寝するような時刻になっても脳波の周波数が速いままで眠気のある脳波が出にくくなる。実際、機能的MRI(磁気共鳴画像)検査などで脳機能を測定すると、脳の覚醒に関わる神経核や大脳皮質の活動が夜になってもなかなか低下してこない。また、音や痛みなどの感覚刺激に対して敏感になるため、睡眠中に弱い刺激を与えられただけでも睡眠が浅くなったり、覚醒してしまう。

 このような脳の反応は、環境が変化したときに我々が無意識に抱える警戒感によって生じるごく普通の(正常な)反応である。このように生物にはいつ襲ってくるか分からない外敵に対峙するための「生体警告系」と呼ばれるシステムが備わっている。旅先で枕が変わるとなかなか寝つけなかったり、いったん眠りに入った後も些細な物音などで目覚めたりするのはこの生体警告系の働きによる。

次ページ:いつでも「闘うか、逃げるか」スタンバイしている状態

『朝型勤務がダメな理由』
三島和夫著

50万ページビュー以上を記録した「朝型勤務がダメな理由」をはじめ、大人気の本連載がついに書籍化! こんどこそ本気で睡眠を改善したい方。また、睡眠に悩んでいなくても自分のパフォーマンスを向上させたい方は、確かな知識をひもとく本書でぜひ理想の睡眠と充実した時間を手に入れてください。『8時間睡眠のウソ。』を深化させた、著者の決定版!
アマゾンでのご購入はこちら