第79回 冬季不眠とは何か 体内時計の「南極物語」

 極夜の何が悪いのか? 私たちの体内時計は放っておくと毎日少しずつ時刻が遅れていく特徴があるが、通常は太陽光で日々時刻調整される。そのおかげで私たちは同じ時刻にあまり苦労せずに寝起きができる。ところが極夜では太陽光を浴びられないために、その時刻調整ができないのである。

 特に体内時計の周期が長い人は(つまり1日当たりのズレ幅が大きい人は)、体内時計の遅れも大きく常態化する。睡眠に入り、また覚醒するために必要となる体温やホルモンの準備態勢が整う時刻も全て遅れるため、夏季と同じ時刻に消灯しても寝つけず、朝は起床しにくくなるのである。

 冬季不眠に悩む人も、夏季に比較して体内時計が遅れた分だけ就床や起床時刻を遅らせれば(緯度や個人差も考慮して1~3時間ほど遅らせれば!)、問題なく寝起きできるようになる。ただし学校や会社が許せばだが……。

 南極や北極ではさらに極夜や白夜が長い。約66度より高緯度で発生し(これより高緯度の地域を南極圏および北極圏という)、昭和基地(南緯69度)で45日間、南極点と北極点ではほぼ半年も続く。このような長期間にわたって極夜が続くと体内時計への影響も甚大である。

 北海道大学の研究チームが、南極の「ドームふじ基地」で越冬した第37 次南極観測隊員の睡眠や生体リズムの測定を行った結果を発表している。ドームふじ基地の所在地は南緯77度というから、もうほとんど南極点のすぐそばである。この緯度だと約4カ月間(第37次では1997年4月26日から8月16日までの114日間)にわたって極夜を迎える。

 ちなみに、『南極料理人』として映画化された西村淳さんのエッセイ『面白南極料理人』は、第38次越冬隊の調理担当としてドームふじ基地で過ごした日々を面白おかしく書いたものである。

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