第32回 時差ボケは忘れた頃にぶり返す

(イラスト:三島由美子)
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 今年もお盆休みで海外旅行に向かう人々のニュースがテレビやネットを賑わせた。2014年に日本を出国した人数は1690万人だったそうだ。訪日外国人旅客数も今年は1500万人を突破しそうな勢いである。

 ここ何回か朝型勤務夜勤など、体内時計に関連した睡眠問題について紹介してきたが、いよいよ真打ち「時差ボケ」の登場である。トリを取るには訳がある。時差ボケは睡眠リズムの異常に関わる症状のオンパレードだし、メカニズム的にも生体リズム界の三遊亭円朝か桂米朝かというくらい味わい深い存在なのである。

 時差ボケの症状は人によってさまざまだが、頻度の高いものから挙げると、不眠(約70%)、日中の眠気やぼんやり感(約30%)、能力低下や頭重感(約20%)、食欲低下などの消化器症状(約15%)、倦怠疲労感(約10%)、眼精疲労やかすみ目(約5%)など多種多様。時差ボケを経験してはじめて我々は体内時計に支配されているんだなぁ、と気づかされた人も多いだろう。

 時差ぼけの歴史は実は古い。15世紀半ばに始まった大航海時代にはすでに船乗りたちがジェットラグならぬボートラグboat-lagを経験したと記録されている。しかし時差ボケが広く知られるようになったのはなんと言っても一般人が飛行機を気軽に利用できるようになった1970年代以降である。

 時差ボケのメカニズムについては体内時計と(渡航先での)生活リズムのズレ、と理解している人も多いと思うが実はもう少し深い。ここでは東京から時差13時間(日本より13時間遅れている)のニューヨーク(NY)に出張したK氏のケースを例に、渡航中の彼の体内で何が生じているのか原因別にまとめてみよう。

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