第77回 昔は良かった? 照明がなければ人は長く眠れるのか

 現代人は安眠できていない、寝足りていない、と漠然と信じている人が多い。社会が近代化される以前、人工照明やテレビもなく、ひっそりと長い夜を過ごした昔の方がよく眠れていたのではないかと。

 たしかに、人工照明(ブルーライト)の影響で体内時計が遅れ気味になり、夜型生活が進行しているのは事実である。過去50年間で就床時刻は1時間以上遅くなる一方で、朝はギリギリまで寝ているためこれ以上遅らせることはできず、結果的に日本人の平日の睡眠時間は正味1時間短くなった。日本人の睡眠時間が世界で最も短いのはご承知の通りである。

 また、不眠症や睡眠時無呼吸症候群のような睡眠障害は増加傾向にあるし、交代勤務(夜勤)や時差ぼけなども24時間社会の中で常態化している。

(イラスト:三島由美子)
[画像のクリックで拡大表示]

 加えて、ストレスや長時間労働による不眠や睡眠不足の問題がある。

 つい最近も、新国立競技場の建設工事に従事していた若い現場監督が過重労働が原因と思われる自殺で亡くなるという悲劇があった。工期の遅れを取り戻すために長時間労働や深夜勤務が続き、ある報道によれば、自殺直前の1カ月で、徹夜が3回もあり、夜22時以前に仕事が終わったのは5日だけだったという。

 では、近代化される以前の人々の睡眠はどうだったのだろうか。ストレスや疾病はどの時代にもあったにせよ、人工照明や夜勤など人間の生理現象に反する環境要因から解放されれば、もっと長く、質の良い睡眠を取れるようになるのだろうか。そのような疑問をもった睡眠研究者たちがいる。

次ページ:結果は「予想よりも短かった」

『朝型勤務がダメな理由』
三島和夫著

50万ページビュー以上を記録した「朝型勤務がダメな理由」をはじめ、大人気の本連載がついに書籍化! こんどこそ本気で睡眠を改善したい方。また、睡眠に悩んでいなくても自分のパフォーマンスを向上させたい方は、確かな知識をひもとく本書でぜひ理想の睡眠と充実した時間を手に入れてください。『8時間睡眠のウソ。』を深化させた、著者の決定版!
アマゾンでのご購入はこちら