第76回 不眠症に効果アリ? 睡眠アプリのヒミツとは

 不眠症になる前はせいぜい7時間程度の睡眠でやり繰りできていたのを忘れ、「8時間以上眠るべき」など目標設定を高くしてしまい(べき思考)、それなりに眠れた夜であっても一回でも夜中に目を覚ますと「ぐっすり以外は全然ダメ」と断定してしまう(全か無か思考)など、考え方が極端になってくる。

 そのため、早い時間帯から寝床に潜り込む、長時間ベッドへしがみつく、睡眠薬を多めに服用してしまう、など行動面でも歪みが生じてくる。このような睡眠習慣が不眠症をむしろ悪化させることは第29回「“青木まりこ現象”からみた不眠の考察」でご紹介した。

 CBT-Iで治療するのはこれら認知や就床行動の「歪み」である。CBT-Iは認知療法と行動療法に分けられるが、まず認知療法として、先に紹介したような本人が気づいていない睡眠や不眠症に対する考え方、とらえ方の歪みを指摘し、思考のバランスをとれるように指導する。

 患者さんによって認知の仕方が大きく異なるため、認知療法を行うには聴き取りやフィードバックを何度も繰り返す必要がある。これはアプリにとっては非常にハードルが高く、かなり作り込まなくてはならない。ソフトだけでは対応しきれず、一部人力を投入する必要が生じることもある。人工知能や機械学習を応用する試みもされていて、今後が楽しみな領域ではある。

 一方で、行動療法では、睡眠日誌に日々記録してもらった就床時刻、起床時刻、自分で感じる睡眠状態、日中の調子などの情報を解析して、その人にとって最適な睡眠スケジュールになるよう分単位で徐々に調整していく。

 アプリにしやすいのはこの行動療法の部分と考えられている。いや、「いた」。スマホに睡眠や体調の記録を残してもらえれば、一定のアルゴリズムにしたがって睡眠スケジュールの指導がオートマチックにできるように思われたからである。

 ところが、先にも紹介したように多くのアプリでは期待に反してなかなか効果が出ないのである。最近日本で作成されたCBT-Iアプリがあり、その検証試験に私も参加したのだが、アプリを使用した患者グループでは不眠症状は改善したものの、効果が比較的小さく、不眠に関する一般的な知識のみを画面上で読んでもらった対照患者グループとの間に統計的な有意差がみられなかった。

 Sleepioとの違いはどこにあるのだろうか?

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