第74回 その寝ぼけ行動、認知症の始まりかも……

 レム睡眠行動障害とは何かというと、夢体験が夢の中だけに留まらず行動化してしまう睡眠障害である。例えば、誰かと喧嘩したり、何物かに襲われたり、犬に噛みつかれそうになって蹴飛ばしたり、などの夢の内容そのままに、寝言で怒鳴ったり、手足を振り回したりしてしまうのである。

 私たちは夢の大部分をレム睡眠中に見る(第16回「夢はレム睡眠のときに見る」のウソ」)。レム睡眠は睡眠段階の一つで、寝ついてから約90分〜120分おきに現れる。レム睡眠中には大脳の活動は比較的活発で鮮明な夢を見ることが多いのだが、逆に体の筋肉は弛緩して全く動かない。

 ナゼ、レム睡眠行動障害ではレム睡眠中に激しい体の動きが出てしまうのであろうか?

 脳幹部と呼ばれる部位にはレム睡眠中に筋肉の動きをオフにするスイッチがあり、健康な人のレム睡眠中にはその「オフスイッチ」の作用で夢行動はおろか寝返りすらできない。ところが、レム睡眠行動障害ではその「オフスイッチ」にトラブルが生じているらしい。

 また、レム睡眠行動障害のほかにも、レビー小体型認知症では嗅覚異常や、手足の震えや筋肉が硬くなり動きが遅くなるパーキンソン症状がよくみられる。

 しかも、レビー小体型認知症では、記憶障害などの中核症状が出現する何年も前から嗅覚異常やレム睡眠行動障害が出現することが多い。パーキンソン症状も中核症状と相前後して、発症のごく早期から認められる。アルツハイマー型など他の認知症でもパーキンソン症状やレム睡眠行動障害がみられることがあるが、かなり病状が進行してから出現するのが普通だ。レビー小体型認知症でのこのような症状の出現順序は特徴的で診断にも大いに役立つ。

 確かなことはまだ明らかにされていないが、これらの特徴はレビー小体型認知症の発症の仕組みとの関係が強く疑われている。

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