第73回 夜に増える転倒にご注意を、高齢者の1割が骨折

「犯罪の2分の1は夜間に起こる。やはり夜はアブナイ」

 統計のマジックとして有名な笑い話だ。日没から日の出まではおおよそ12時間だから、犯罪の半分が夜に起こっても何ら不思議はない(ちなみに、これはたとえ話で、実際には犯罪の種類によって起こりやすい時間帯は異なる)。

 では、これはどうだろう。

「高齢者の転倒の3分の1は夜間に起こる。やはり夜はアブナイ」

 転倒が起こりやすいのは夜9時過ぎから翌朝6時頃までの8~9時間、いわゆる就寝時間帯である。8~9時間と言えば1日のほぼ3分の1だし、転倒の3分の1が就寝時間帯に起こるのは当たり前だろう、などと早合点しないでほしい。なぜなら、その時間帯の大部分は眠っているか、寝床で横になっているため転びようがない。実質的には、夜中に目覚めて尿意を感じ、寝床とトイレを往復する、そのわずかな時間帯に転倒が集中しているのだ。目が覚めている単位時間あたりの転倒率は昼よりも夜の方がずっと高いのだ。

(イラスト:三島由美子)
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 しかも、高齢者が転倒すると10回につき1回の割合で骨折をしてしまい、その後の生活に大きな支障をきたすことも少なくない。ちなみに、そもそも高齢者はとても転びやすく、日本では65歳以上の高齢者の約4人に1人が少なくとも1年間に1回は家の中で転倒しており、高齢になるほどその頻度が増える。転倒に絡んだ医療と介護費は年間9千億円以上に達するという試算があるほどだ。

 特に太ももの骨の付け根部分(大腿骨近位部)の骨折は深刻で、10%以上は寝たきりになる。二足歩行の人間にとって転倒は宿命のようなものだが、大腿骨近位部骨折のような重症骨折も、大きな事故や転落ではなく、その9割近くは歩行中の転倒によって起こっているのだ。

 それにしても、なぜ、高齢者の転倒は夜間に起こりやすいのであろうか。

 パッと考えると夜中で薄暗いために段差が見えにくいなどの原因が頭に浮かぶと思うが、そのほかにも夜間には転倒を引き起こすさまざまな要因がある。

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