第91回 実現間近!?AIによる睡眠指導に抱く一抹の危惧

 飲酒後の睡眠状態が悪ければAIから節酒の指示が出ることは間違いない。あるキャバクラで異常に心拍数が上がれば「危険区域」に指定されるかもしれない。お気に入りの女の子から入った営業用SNSメッセージへのレスにも気をつけなくてはならない。精神状態をAIに推定されるからである。これらの生体情報は単発では信頼性が低いが、同一の個人で何度もデータを収集しているうちにその精度はいやが上にも高まる。

 テクノロジーの進化は凄まじい。AIの能力が人類を超え(いわゆるシンギュラリティ問題)、映画「ターミネーター」が現実になるのではないかと本気で心配している人もいる。しかし、個人的にはもっと卑近で、それが故に現実に起こりそうな不安を感じている。

 もしかしたら遠からずユーザー以上にユーザーのことを知り尽くしたAIから冒頭のようなアラートが日夜発信されるのではないかと! 例えば会社でメタボ健診に引っかかったが最後、ウエアラブルデバイスを着けさせられ、スマホからコーチングをしてくるAIの設定は自分勝手に変えられない。指示に従わず自宅と違う方角に向かった段階で監督者(奥さん)のスマホにお知らせメールが入り、同時に懲罰として自宅玄関の電子錠は明朝まで開かないようにロックされてしまう。飲食店やカプセルホテルでのクレジット決済もブロックされるためプチ家出もできないのである。

 愛情や心配も度を過ぎると息苦しい。的確なアドバイスをくれつつ、利用者への気遣いも忘れない愛あるAIは登場するのか。私のスマホのSiriに「愛って何?」と尋ねたところ「それにはお答えできません」とすげない返事が返ってきた。

つづく

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三島和夫(みしま かずお)

1963年、秋田県生まれ。医学博士。国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所 睡眠・覚醒障害研究部部長。1987年、秋田大学医学部医学科卒業。同大精神科学講座講師、同助教授、2002年米国バージニア大学時間生物学研究センター研究員、米国スタンフォード大学医学部睡眠研究センター客員准教授を経て、2006年6月より現職。日本睡眠学会理事、日本時間生物学会理事など各種学会の理事や評議員のほか、睡眠障害に関する厚生労働省研究班の主任研究員などを務めている。これまでに睡眠薬の臨床試験ガイドライン、同適正使用と休薬ガイドライン、睡眠障害の病態研究などに関する厚生労働省研究班の主任研究者も歴任。『8時間睡眠のウソ。日本人の眠り、8つの新常識』(川端裕人氏と共著、集英社文庫)、『睡眠薬の適正使用・休薬ガイドライン』(編著、じほう)などの著書がある。近著は『朝型勤務がダメな理由』。