第91回 実現間近!?AIによる睡眠指導に抱く一抹の危惧

 ところが、昨年あたりから再びこの分野が活性化してきた。その背景にはAI(人工知能)への期待がある。国や企業がAIやIoTを活用した研究や開発事業に研究費を注ぎ込み始めたためである。国の医学研究費の元締めである日本医療研究開発機構AMEDが公募する研究の要項(どのような研究を求めているかの解説書)を眺めてもあちらこちらにAI、IoTの文言が並び、さしずめ「AI、IoTにあらねば研究に非ず」といった態(てい)である。吃驚するくらい高額な研究費が配分されるのを見て、こじつけでも構わないから申請書に「AI、IoT」と書き込まねばならないという強迫観念に駆られている研究者が少なくない。

 確かに、皮膚疾患や内視鏡などの画像解析、診療報酬やゲノムのいわゆるビッグデータ解析など、AIの機械学習や深層学習が得意とする領域では先駆的な研究が行われているが、その他の多くの医学領域では未だAIやIoTをどのように研究に展開すべきか模索している段階にある。そんな中でウエアラブルデバイスは比較的AIやIoTと親和性が高いと目されている。なぜなら、IoTで吸い上げた「個人の」精密な生体ビッグデータを、AIを使って生活環境や医療情報と紐付けて解析することで、従来の技術では難しかった効果的なテーラーメイドコーチングが可能になるかもしれないからだ。

 例えば睡眠の場合、微細な体動を常時モニターし、その解析から寝ているか起きているかを分単位で推定する。メガネ型デバイスであれば脳波を直接測定することで日中の脳の覚醒度も評価できる。仕事に集中している時、リラックスしている時、疲れている時、酒を飲んでいる時、さまざまなシチュエーションでの生体情報がAIによって統合され、判定され、コーチングに反映される。もちろんスマホのカレンダー機能からその日のスケジュールは筒抜けである。パソコンのキータッチやスマホのゲームアプリのスコアもパフォーマンスを測るデータとして収集される。ゲームに課金していた時の体温や心拍数もストレス指標としてモニターされる。どこでどんな酒を飲んでいるかも位置情報やスイカの支払いデータからバレバレである。

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