第70回 香りは睡眠調節の名脇役?

(イラスト:三島由美子)
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 いわゆる人の五感とは、視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚であり、これら感覚刺激を受け取る人体の器官(目、耳、皮膚、舌、鼻など)を感覚器と呼ぶ。光や音などの知覚情報は感覚器からそれぞれ固有な神経伝達路を通って脳に送られる。

 私たちの身の回りには五感を楽しませてくれるさまざまな物品がある。聴覚には心地よい音楽、視覚には素晴らしい風景、触覚には肌触りの良い衣類や調度、味覚には思わず舌鼓を打ちたくなるような珍味、そして嗅覚には香しい薔薇(ばら)など。

 私たちの睡眠は日常の生活で受け取る感覚刺激の影響を大なり小なり受ける。その中でも睡眠に最も強く影響するのは目から入る「光」である。日の出や日没、夜間照明などの外界の明暗情報は睡眠リズムの調節に絶対的な影響力を及ぼす。

 細かい話になるが、睡眠リズムを調節する光は目から入るにもかかわらず、専門用語では「非視覚性作用 non-photic effect」と呼ばれる(第13回「もっと光を! 冬の日照不足とうつの深~い関係」)。冒頭の五感の話と矛盾しているようだが、ここでの非視覚性作用とは「モノを見る以外の作用」という意味合いで使っている。光が睡眠リズムを調節するために必要な神経伝達路は、モノを認識する後頭葉まで行かずに途中で分岐する。したがって、「素晴らしい風景」でなくても明るければそれで十分なのである。詳しくは第13回をお読みいただきたい。

 さて、他の感覚刺激が睡眠に及ぼす影響はどうかというと、視覚(光)に比べるとやや存在感が薄くなる。今回のテーマである嗅覚と睡眠の関係についても実は「まだよく分かっていない」。しかし、嗅覚はその神経伝達路が他の感覚と大きく異なる特徴があるため、脳科学的にはとてもユニークな存在だ。

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