第88回 睡眠リズムの乱れは心の乱れ、躁うつ病では顕著

リズムの達人にはなれなくても、ノルマクリアはぜひ。(イラスト:三島由美子)
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 精神科医であれば、躁うつ病(双極性障害)では気分が日々の睡眠状態の影響を受けやすいことは診療経験からよく知っている。患者さんが徹夜をしたり、逆に長時間寝たり、夜勤などで昼夜逆転した後に、気分の大きなアップダウンが起こることが多いのである。

 双極性障害では気分が高揚する躁状態と、気分が落ち込むうつ状態の両方がみられるが、特に躁状態と睡眠の関係が深い。躁うつ病が再発する原因を調査したある研究では、3分の1の患者さんで睡眠時間が短くなった翌日に気分が大きく高揚するという現象がみられている。短時間で自然に目が覚めた翌日に高揚することもあれば、たまたま徹夜した翌朝から高揚することもある。

 気分の高揚は双極性障害における躁状態の症状のひとつに過ぎない。いったん躁状態が発症すると気が大きくなり、時には尊大になって顰蹙(ひんしゅく)を買う、怒りっぽくなって人間関係を壊してしまう、金遣いが荒くなって借金を重ねるなど、逸脱した言動のために社会的な立場が抜き差しならない状態にまで悪化することも少なくない。そのため再発予防が最も大事になる。

 双極性障害の再発と睡眠の変化は、どちらが卵でどちらが鶏なのか?

 そのような質問を受けることがあるが、おそらく双方向的な関係にあるのだろう。つまり睡眠時間やリズムの乱れは、躁状態の前兆(結果)である場合もあれば、再発のトリガー(原因)となっている場合もある。

 先述したように双極性障害の治療では再発防止が最大の課題である。だが、双極性障害は再発率が高く、いったん症状が治まっても1年以内に50%、5年以内に80%以上の患者さんが再発するという報告もある。これでは安心して生活を送れない。

 これまで双極性障害の再発を予防するさまざまな試みが行われており、一定の効果を発揮する薬物療法や心理療法が見つかっている。その中の1つに、米国ピッツパーク大学医学部精神科の臨床心理学者エレン・フランクによって開発された「対人関係社会リズム療法 Interpersonal and social rhythm therapy(IPSRT)」がある。

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