第69回 歯ぎしり治療の成功例“マーキング作戦”

(イラスト:三島由美子)
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 今回のテーマは睡眠中の「歯ぎしり」である。
 専門用語では睡眠時ブラキシズム(sleep bruxism)である。

 もの凄い歯ぎしりと聞いて思い浮かぶのは、筒井康隆著『文学部唯野教授』に登場する河北学部長のそれである。学部内ヒエラルキーの頂点に君臨し、機嫌の悪いときに「ばりばりばり」という威嚇するような歯ぎしり音を発して取り巻きの教授連中を震え上がらせるのである。

 歯ぎしりとは、睡眠中に咀嚼筋(そしゃく筋、モノを噛む顎の筋肉)が収縮して、下顎の不随意運動、すなわち自分では意識しない運動が起こる結果、歯を強く食いしばる現象のことである。睡眠はレム睡眠とノンレム睡眠に分けられ、さらにノンレム睡眠は浅い方から順に段階1から4に分けられるが、一般的に歯ぎしりはノンレム睡眠の段階1、2 (浅い睡眠)で起こることが多い。

 ちなみに、覚醒中にも歯ぎしりと似た下顎の運動が生じることがあり、悔しいとき、イライラしているときに知らず知らずのうちに歯を食いしばってしまういわゆる「歯噛み」がそれに該当する。先の学部長の「ばりばりばり」も日中であることを考えれば歯噛みと表現する方が正しい。

 歯ぎしりの顎の動きは食事の時の咀嚼よりもゆっくりであり、別名、リズム性咀嚼筋活動と呼ばれる。実は成人の半数以上で睡眠中にこのリズム性咀嚼筋活動が見られるのだが、大部分は歯ぎしりを生じない。つまり強く歯を食いしばるまでには至らない。「モグモグ」くらいである。

 歯ぎしりでは、上下の歯を擦り合わせる摩擦で「キリキリ」「バリバリ」などの音が出ることが多いが、グーッと噛みしめるだけで音が出ないこともある。また例数は少ないが「カチカチ」とタッピングをすることもある、らしい。らしいと書いたのは私がそのような患者さんに出会ったことがないためだが、その程度だと睡眠障害外来に受診しないだけで実際にはいるのだろう。

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