第86回 寝てる間に殺人犯になってしまった! そのワケとは

事例5:子どもに猛獣が襲いかかる夢を見て、子どもを守ろうとして抱き上げ壁に投げつけてしまい、子どもが死亡した
事例6:キャンプ場で寝ていて、火で焼かれる夢を見て飛び上がり、斧で近くにいた人を殺してしまった
事例7:押し込み強盗が家族を殺す夢を見て、銃を乱射して父親、兄を射殺してしまった
事例8:自分と妻がジャングルで日本人兵士2名に追いかけられる夢を見て、そのうち1名と格闘して殴る蹴るなどしているうちに気づいたら妻を殺していた

 これらは「睡眠時驚愕症(夜驚:やきょう)」と鑑定された事例である。

 睡眠時驚愕症は錯乱性覚醒と同様に深いノンレム睡眠の直後に生じることが多い睡眠障害だが、最初から強烈な恐怖感を伴って目覚めるため、絶叫したり暴れるなど激しい興奮状態になるのが特徴である。いくら脳波上は睡眠状態にあるとはいえ、格闘中に被害者から殴り返されるなど抵抗されればしっかり目が覚めてもよさそうなものだが、不思議なことに強い刺激を与えてもなかなか覚醒できない。そのメカニズムは現在も不明である。

 大人の睡眠時驚愕症では怖い夢や幻覚体験を伴うことがあり、興奮の度合いが強まる。上の事例もそれに当たる。夢はレム睡眠で見るのではないのかとよく聞かれるが、ノンレム睡眠でも見ることがある(参照:第16回「「夢はレム睡眠のときに見る」のウソ」)。

 そのほか、睡眠時遊行症(夢遊病)や睡眠関連解離性障害などやはりノンレム睡眠に関係した睡眠障害でも事件が起こっている。これらの事例を見ても分かるように、睡眠障害が原因と考えられる殺人や傷害事件の多くは深いノンレム睡眠から目覚めた直後の興奮状態の最中に起こることが非常に多い。

 それでは夢を見る睡眠であるレム睡眠中には起こらないのであろうか。レム睡眠は約90分〜120分おきに現れ、睡眠時間の20%以上を占める。

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