カリスマ ドッグトレーナー、シーザー・ミランに聞いてみた

Photograph by Snake Oil AKA Ping Pong Productions
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――「アルファ制度(群れのリーダーに従う習性)」や「鼻→目→耳(犬にとって重要な感覚の順番)」といった犬の習性は、どうやって把握したのですか。

 動物の群れを観察しているうちに、群れのなかでの序列について学びました。群れのなかでは、ある犬がほかの犬たちを従えている様子が常に見られます。そうした序列は、子犬の頃からすでに存在しています。母親は子犬に序列に従うことを教え、諭しているのです。

 「鼻→目→耳」は子犬の成長から来ています。その順番で彼らの感覚器官が発達していくのです。生まれたばかりの子犬は目が見えず耳も聞こえません。嗅覚によって母親を探します。においとエネルギーを組み合わせて、犬はほかの個体と人間を識別します。これら二つの要素の組み合わせが、犬にとって「名前」に相当するのです。科学的にも、犬は脳の6割を鼻から得た情報を処理するのに使うとされています。犬は嗅覚に支配される度合いが強いのです。

――ミランさんでも手に負えない犬はいますか。それは、どんな犬ですか。

 この犬はリハビリ不能だ、と感じたことが一度だけありました。ある子犬養育所から、1組の子犬のリハビリを依頼されたときのことです。子犬たちは著しく発育不良で、神経に深刻な問題を抱えていました。そのため、犬の心理学の手法がまるで役に立たなかったのです。

 そういったケースを除けば、犬よりも飼い主の側が原因となって、リハビリが難しくなることのほうがずっと多いです。私が教えたことを飼い主が学べず、それをやり通せなければ、飼っている犬のリハビリは絶対にできません。通常、犬の問題行動の原因は人間の側にあります。飼い主の原因が解決されなければ、犬が「直る」こともあり得ないのです。

――これまで多くの飼い主を見てきて、犬を飼っている人が陥りやすい間違いを一つ挙げるとしたら何ですか。

 犬が人間と同じように考え、自分たちの言葉を理解するという思い込みです。犬は人間の子どものように論理的に諭すことはできません。自分の身の回りに今起きていることにしか関心が向かないので、たとえば1時間前の誤った行動を直そうとしても、理解することも関連付けることもできないのです。

 同様に、未来に起こるであろうことを認識する能力もありません。「おとなしくしていたら、後でドッグランに連れていってあげる」というように、将来、ご褒美を与えることを条件に行動を起させることもできないのです。

 犬を人間と同じように見てしまうと、飼い主は犬に愛情だけを与え続けます。そうした育て方をすると、犬はすぐに情緒不安定になってしまいます。犬に必要なのは運動、規律、そしてその次に愛情なのです。この順番が大事です。