第64回 ハロウィーンといえばカボチャ…ではなくあの野菜だった

 ジャガイモを主要作物としていたアイルランドのジャガイモ飢饉は、100万人以上が亡くなるという19世紀の欧州最大の惨事を引き起こした。当時のアイルランドはイギリスの支配下にあったが、イギリスでは何の対策も施されなかったため、貧困に苦しんだ多くの人がアメリカへと移住したという。

 そこに持ち込まれたハロウィーンがアメリカの文化と融合して、現在の華やかな行事へとかたちを変えていったのである。渡辺さんの話によると、アイルランドでは1970年代までは昔ながらのハロウィーンの過ごし方が主流だったが、80年代頃から仮装行列が始まったそうだ。

 ちなみに、カボチャを使った料理について聞くと、「最近は食べたりもするようだけれど、私が子どもの頃はなかったわ」と大使館のアッシュリンさん。JJさんとその友人も同じで「いまもカボチャはあまり食べないよ。大人になったのでギネスは飲むけどね!」とビールグラスをかかげる。

 コルキャノンのジャガイモにバーンブラックのフルーツ、ハム、チーズとハロウィーンに並ぶ料理はどれもアイルランドの食卓に昔からあるもの。収穫の最終日にそれらをいただくことは食のありがたさを噛みしめることでもあったのかもしれない。

 伝統行事が時代とともに変化していくことは、決して悪いことではないと思う。ハロウィーンの日にカボチャを飾ったっていいし、食べたっていい。ただ、その意味や歴史を知ることで行事も、そこで食べる伝統料理もより味わい深くなる。そんなことを思いながら、3枚目のバーンブラックを口にいれた。

アン・バリントン大使(中央)とJJさん(左)。「アイルランドの学校はハロウィーンの日を中心に1週間ほど休みになるんですよ」とJJさん
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中川明紀(なかがわ あき)

講談社で書籍、隔月誌、週刊誌の編集に携わったのち、2013年よりライターとして活動をスタート。何事も経験がモットーで暇さえあれば国内外を歩いて回る。思い出の味はスリランカで現地の友人と出かけたピクニックのお弁当とおばあちゃんのお雑煮