第64回 ハロウィーンといえばカボチャ…ではなくあの野菜だった

 この日のバーンブラックには指輪が入っているというので、張り切って2回も取り分けてもらったがかすりもせず……。甘さ控えめでややかたい生地はかみしめるほど味わい深く、ドライフルーツの甘みとピリッと効いたスパイスがいい塩梅。人生ってこんなものかもしれないな。まあ、美味しかったのでよしとしよう。

 いっぽうのコルキャノンは茹でて潰したジャガイモとケールまたはキャベツをミルクやバターと混ぜた料理。口当たりなめらかでバターのコクがジャガイモの甘さを引き立て、子どもが好きそうな味だ。普段もよく食べるそうだが、ハロウィーンの日にはやはり指輪やコインを入れたりするらしい。

 さらに、未婚女性がコルキャノンの最初と最後の1さじを靴下に入れてドアにぶら下げると、 そのドアを通った最初の男性が未来の夫になるという伝承もあるそうだ。年頃の女子たちが盛り上がっている姿が想像できてほほえましい。

「アイルランドではジャガイモが主食のようなもの」と話すのはJJさんと一緒にビールを飲んでいた男性。「コルキャノンのほかに、フライドポテトやマッシュポテト、ローストポテトにして毎日のように食べます。日曜の昼はサンデーランチといって、お母さんが特別な料理をつくって家族で食卓を囲みます。その時もビーフやラムのグリル料理にポテトを添えて、グレイビーソースをかけて食べるのが定番です」

 南米原産のジャガイモが欧州にもたらされたのは15世紀末から16世紀。痩せた土地でも栽培しやすく、日持ちもする食物であるため、飢饉を救うなどして欧州に広まったことは以前にも述べた。しかし、このジャガイモが、アイルランド人がハロウィーンを世界各地に広めるきっかけにもなったという。19世紀の半ば、アイルランドで疫病によるジャガイモの大飢饉が発生したのである。

バターたっぷりのコルキャノン。リーキやチャイブといったネギの仲間の野菜を加えることもある
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