第64回 ハロウィーンといえばカボチャ…ではなくあの野菜だった

現在のアイルランドのハロウィーンパレード(写真提供:アイルランド政府観光庁)
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「ケルトの人たちは現実世界のすぐ隣に見えない異界があると信じていました。サーウィンは夏の終わりであると同時に、異界との境界線が薄くなって、そこにいる妖精や死者が訪ねてくる日だとされているんですよ」

 なるほど、子どもたちがオバケに扮してお菓子をねだるのは、これに由来するのだろう。焚火にも悪い魂を払いのけ、新しい冬を迎えるという意味があるそうだ。渡辺さんに続いて話をしたアイルランド人ジャーナリストのJJさんが語る。

「子供にとってはお菓子をもらうことも重要ですが、それよりも夜に家族と過ごす時間が大切でした。収穫したリンゴやナッツ、用意された料理を食べながらアイルランドの妖精やオバケの話を聞く。そうやって歴史と伝統が受け継がれていったんです」

 幼い頃、お盆の時に用意したキュウリとナスの精霊馬や迎え火を思い出した。我が家はお盆に素麺を食べていたが、アイルランドの人々はハロウィーンにいったいどんな料理を食べるのだろうか。セミナーも後半戦へと移り、大きなテーブルにお菓子やナッツのほか、ハムやチーズ、パンなど様々な料理が並べられた。

「この日は食卓を囲むというより、軽食やお菓子を食べて過ごす家庭が多いですが、伝統的な料理もあります。必ず出るのはバーンブラックとコルキャノンですね」とJJさん。バーンブラックはドライフルーツが入ったパン(またはケーキ)だ。切り分けて食べるのだが、パンの中には未来を占う“食べられないもの”も入っているという。

「指輪が入っていたら“結婚する”、コインは“裕福になれる”、布切れが当たると“貧困になる”と言われているんですよ」

バーンブラックはウィスキー、温かい紅茶、レモン果汁に浸したドライフルーツを生地に混ぜて焼く。仕上げにシナモンなどのスパイスを混ぜ込んだバターを塗って完成だ。丸いかたちをしたものもある
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