第62回 所変わればパスタも変わる 深遠なるイタリアのパスタ文化

ペルージャ出身のマッティアさんは来日18年。帰国すると母のラザーニャとトルテリーニを必ず食べるそうだ
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 乾燥パスタは南部に移住したアラブ人がもたらしたという説もあるが、地中海性気候で乾燥した南部はデュラム小麦の栽培に適するとともに、パスタを自然乾燥することも可能だった。デュラム小麦を粗挽きにしたのがセモリナ粉だ。一方、大陸性気候の影響を受ける北部は比較的湿度が高いため、主に普通の小麦を使った生パスタが伝統的に作られたようだ。

 たんぱく質を多く含み、弾力性に富んだセモリナ粉は生地の形が崩れにくく、コシもあるため、パスタに適している。そこへパスタ製造の機械化と人工的な乾燥技術が発展したことで、普及していったようである。また、パスタ押し出し機をはじめとする機械化は複雑なかたちのパスタの製造も可能にした。同じ形でも幅が違えば名前が違い、地方によっても名前が異なったりするので膨大な種類になるようだ。

 そして、地元の特産品や調理法に適したパスタがつくられ、地方色の強い名物パスタ料理が生まれていったのだろう。「観光客向けの店にいくと様々なパスタが揃っていますが、ローカルな店はその土地のパスタしか食べられないと思いますよ。それくらい、自分の土地のパスタに自負があるんです」とサンドロさん。

 しかし、家庭となるとまたちょっと違ってくるようだ。「ストランゴッツィは名物だし好きだけれど、忘れられないのはおかあさんがつくるトルテリーニだなあ」とマッティアさんが懐かしそうにいった。トルテリーニは生地に肉などをつめて輪をつくるように巻いたパスタだ。

 そういえば、前回ラザーニャを食べた店「ラザーニャ イタリアーナ」のアントニオさんがいっていた。「おかあさんのキッチンにはいろいろなパスタがずらりと並んでいて、クリームソースにはこれ、トマトソースはこっちと、ソースや具によってパスタを使い分けていました。さらに、家にはパスタマシーンがあってタリアテッレ(きし麺のような形状のパスタ)やニョッキを作っていましたよ」

 その話をすると、「おかあさんは買うことが多かったけれど、おばあちゃんは生地からパスタをつくっていました」とマッティアさん。サンドロさんも、「誕生日や結婚記念日などの記念日は必ず家でつくる生パスタでしたよ」と言う。

トルテリーニはエミリア・ロマーニャ州の名物。地域によってはカペレッティともいわれる。スープに浮かべたものはトルテリーニ・イン・ブロードと呼ばれる料理だ(c)イタリア政府観光局
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