第62回 所変わればパスタも変わる 深遠なるイタリアのパスタ文化

 そんな話を聞いているうちにパスタが食べたくなってきた。すると、サンドロさんが商工会議所主催のイベントを案内してくれた。商工会議所が本場の味と認定するレストランでイタリア料理を食べながら交流するイベント「アペリティーヴォ・デッラ・カメラ」だ。月に1回ペースで会場は毎回変わるが、誰でも参加できるというので早速、訪れることにした。

 この日の会場は東京の港区南青山にあるイル・パチョッコーネ。しかし、出掛ける前に別件のトラブルがあって開始時間に遅れてしまった。着いた時にはあふれんばかりの人。大盛況で立食形式の料理もほとんど出てしまっていて、何とかいただけたパスタがリガトーニ・アッラ・アマトリチャーナだった。サンドロさんの故郷の名物だと思いながら、さっそく口にいれる。

 見た目はシンプルで口当たりもさっぱりしているが、トマトの酸味と甘み、チーズのコクが相まってじわじわと味わい深い。リガトーニは大きめなパスタだが筋が入っているのでソースがよく絡んでいる。ほのかにきいたニンニクが後をひいてあっという間に完食。すぐさまおかわりを取りに行ったがすでに売り切れだった。がっくり。

 でも、パスタの話を聞くことはできた。「私の出身地で有名なのはストランゴッツィですね」と話すのは中部ウンブリア州ペルージャ出身のマッティアさん。「靴ひも」という意味を持つこのパスタは平べったい手打ちのロングパスタでうどんのようなコシがあるのだそう。

「ウンブリアは黒トリュフも有名なので、ストランゴッツィに黒トリュフとチーズ、オリーブオイルを絡めて食べるんです」とマッティアさん。なんと贅沢そうなパスタだろうか。食べてみたいなあ。

 パスタを製造方法からみると、生パスタと乾燥パスタの大きく2つに分けられる。簡単にいうと、製造過程に熱を加えて水分を飛ばしたものが乾燥パスタで、熱を加えず水分を含んだ状態のものを生パスタという。現在は保存や輸出が可能な乾燥パスタがイタリア全土はおろか世界中に普及しているが、もともとは北が生パスタ、南は乾燥パスタという特色があるらしい。

右の太麺がトスカーナ州でよく食べられるパッパルデッレで、その手前はほうれん草を練り込んだパッパルデッレ。正面がタリアテッレで、その上の細麺がピエモンテ州名物のタリオリーニ。これらは生パスタだ。一方、左上は乾燥パスタのブカティーニで、その右がフジッリというらせん状のロングパスタ。イル・パチョッコーネでは常時10種類ほどのパスタが食べられる
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