第62回 「ラザーニャ」はイタリアのマンマの味

 中世になると様々な形状のパスタが文献等に登場するが、パスタという言葉が一般的に使われるようになったのは近代のこと。13世紀~14世紀頃にはパスタのことをラザーニャと呼んでいた記録も残るというから、ラザーニャはパスタの原型に近いものだと考えられるだろう。

 イタリア半島に南米原産のトマトが入ってきたのは16世紀頃であり、ボロネーゼを使う料理としてのラザーニャが現在のようなスタイルになったのはそれ以降だ。長い歴史の中でラザーニャは発展しながら食べ継がれ、いまやイタリア全土で家庭の特別な料理として愛されている。

 それは、後日参加した「アペリティーヴォ」で確信した。イタリア料理を介して交流を深める在日イタリア商工会議所主催のイベントだ。そこで出会ったウンブリア州ペルージャ出身の男性は「サンデーランチで食べていたし、いまも帰国したら必ず食べるよ」と母のラザーニャを懐かしんだ。北西部ミラノ出身の女性も「クリスマスや復活祭で食べた思い出深い料理ね」と話した。先に述べたナポリのラザーニャも郷土料理として有名だという。

 彼らの話を聞くうちに、ラザーニャ イタリアーナのひろのさんの言葉を思い出した。「料理人として15年以上の経験を持つアントニオですが、彼の料理の根本は故郷のおかあさんの味にあると思います」。あのまろやかで温かなラザーニャもまた、マンマの味だったんだ。

 それにしてもパスタの世界は奥深い。イタリアのパスタは500種とも600種とも言われ、地方によって名物が異なるそうだ。今回話を伺ったイタリアの人たちもラザーニャ以外に、自分の生まれ育った土地の名物パスタを熱く語っていた。次回は私がちょこっとだけ触れることができた、イタリア人のパスタ愛を紹介しよう。

ラザーニャ イタリアーナのアントニオさんとひろのさん。09年から日本で暮らし、11年にキッチンカーでの販売を始めた
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Lasagna Italiana(ネオ屋台村)
http://www.w-tokyodo.com/neostall/kitchencar/lasagna-italiana

Lasagna Italiana(お店のHP)
http://www.lasagna-italiana.com/

中川明紀(なかがわ あき)

講談社で書籍、隔月誌、週刊誌の編集に携わったのち、2013年よりライターとして活動をスタート。何事も経験がモットーで暇さえあれば国内外を歩いて回る。思い出の味はスリランカで現地の友人と出かけたピクニックのお弁当とおばあちゃんのお雑煮