第62回 「ラザーニャ」はイタリアのマンマの味

 かたすぎると舌ざわりが悪いし、やわらかいと何層も重ねるときにかたちが崩れてしまう。ベシャメルソースのとろみ具合はこのラザーニャの肝らしい。そして、トレーにバターを塗り、ボロネーゼ、ベシャメルソース、生地を重ね、パルミジャーノ・レッジャーノをかけて層をつくって焼き上げる。簡単にと言いながら、なんて手間のかかる料理だろうか!

「そうなんです。とても時間のかかる料理だから特別なときに食べるのかもしれません。日曜になるとおかあさんは朝から準備をしていましたよ」とアントニオさん。この正統的だというラザーニャはイタリア北部、エミリア・ロマーニャ州の美食の町ボローニャで生まれたスタイル。ボロネーゼ発祥の地だ。一方、南部のナポリではベシャメルソースではなくリコッタチーズなどのチーズに、茹で卵やソーセージを入れたりするそうだ。アメリカに伝わったのはナポリのラザーニャだったのだろうか。

「そのほか、キノコを入れたソースなど地方それぞれの名物を用いたりします。アントニオの出身地ラ・スペツィアがあるリグーリア州はペスト・ジェノヴェーゼ(ジェノバソース)が有名で、ラザーニャにもこのソースを使ってアレンジしたりするそうです」と奥様のひろのさんが教えてくれた。

 サンデーランチで食べる機会も地方や家庭によって異なるらしい。ローマ近郊の出身である在日イタリア商工会議所のサンドロ・フルツィさんは、ラザーニャは新年などに食べる料理だという。「ラグー(煮込み)や挽き肉を使ったパスタは冬に食べる習慣があります。ラザーニャもそのひとつです」とサンドロさん。そのほか、お祭りで食べる家庭も多いようで、少し前の話だがこんな事件もあった。