第61回 豚肉だけどフルーティー、ハイチ料理の“グリオ”とは?

 そもそも、ハイチでは柑橘類とエピスなどで味付けして揚げた肉料理はタソという。牛はタソベフでヤギはタソカブリだ。ではなぜ、豚の場合はグリオなのか。調べてみるとグリオ(griot)という言葉には、「西アフリカの語りべ」という意味もあるらしい。ハイチはコロンブスが新大陸を発見した後にフランス領となった。その際に西アフリカから奴隷として連れてこられた人々が18世紀の終わりに立ち上がり、1804年に中南米で初めて独立した国家だ。

 そのため、ハイチ料理は西アフリカとフランスの料理が融合した「クリオージョ料理」とされている。クリオージョとは本来、植民地で生まれたヨーロッパ人を意味し、転じて複数の国の影響を受けた文化や料理を指すようになった。西アフリカ同様にハイチには煮込み料理が多いし、柑橘類を使った凝った味付けは、フランス料理によくみられる柑橘系のソースなどをうかがわせる。

 また、豚や牛、馬などの家畜はヨーロッパからアメリカ大陸に移住した人が持ち込んだもの。その中で豚は、放し飼いでもどんどん繁殖するほど飼育しやすかったため、いち早く普及して移住者の食を支えた。奴隷もいい部位ではないものの日常的に食べることができたという。豚肉にはトウモロコシや豆が主食だった彼らの栄養を補う役割もあったようだ。

 だからと言うのは短絡的かもしれないが、豚肉の場合だけ自分たちのルーツを意味するような「グリオ」と名付けられているのは、彼らのソウルが込められている証ではないかと思う。

 ミホさんとの結婚を機に来日したというアレンさん。日本に住んで感じたのは、ハイチがあまり知られていないということだそうだ。2010年の大地震などの自然災害や政情不安のニュースは報じられても、ハイチの国のよさはなかなか伝えられていない。確かに経済発展が滞った貧しい国ではある。しかし、魅力的なところもたくさんあるとアレンさんは言う。

黒い車体が目印のCHERIEは2011年にオープン
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