第52回 知ってほしいクルドの味

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「ワラビスタンって知ってる?」

 池袋で飲んでいた時、友人のMちゃんが聞いてきた。ワラビスタン……耳慣れない言葉だ。想像もつかないや。そう答えるとMちゃんはビール片手に身を乗り出してきた。

「埼玉の蕨駅周辺に在日クルド人がたくさん住んでいて、そう呼ばれたりもしているみたい。1000人以上いるらしいよ」

 そんなに住んでるの!? クルド人といえばトルコやイラン、イラクなどにまたがる山岳地帯に住み、ペルシャ語系のクルド語を話す民族(※本誌2016年3月号の特集「イラクのクルド人 踏みにじられる未来」もあわせてご覧ください)。「スタン」とはペルシャ語で「土地」を意味し、ワラビスタンはクルディスタン(クルド人の土地)をもじって呼ばれているらしい。「でもなぜ蕨に?」という私の言葉をスルーしてMちゃんは続ける。

「それでね、そこでたまにクルドの料理教室をやっているんだって。行ってみない?」

 クルド料理ってどんな料理なんだろう。やはりトルコやイランに近いのだろうか。蕨に集まっている理由も知りたいし、これは断る理由がない。さっそく料理教室を主催する日本クルド文化協会に問い合わせ、参加することにした。

 料理教室の会場は蕨駅から歩いて15分のところにある川口市の公民館。学校の家庭科室のようにキッチン台がいくつも並ぶ部屋で、すでにクルド人の女性たちが準備を始めていた。「みんなが頭に巻いているスカーフ、小さい花がついているよ。かわいいね!」とMちゃんは早くもウキウキだ。レース編みだろうか、確かにスカーフの端に繊細な花がついている。

「オヤっていう伝統的な刺繍です。クルドの女性はみんなできますよ」。黒いスカーフを巻いた女性が教えてくれた。料理教室の代表を務めるグレさんだ。トルコでも有名な手芸だそうで、そういえばトルコに行った時に友人がスカーフを買っていたな、と思い出す。