第67回 フィリピンの“サリサリ”な豚肉料理

「店の料理は母や祖母から教わった味をベースに洗練させたものです」というアンナさん
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 でも、聞いたら食べたくなるじゃないか。そこで調べてたどり着いたのが、埼玉県戸田市にある「アナスサリサリストア」だ。レストランが併設されたサリサリストアで、メニューも豊富と聞いて訪れたのである。

 中は先日の店と同様に調味料や瓶詰、スナック菓子がずらり。冷蔵庫には飲料のほか、マンゴー、パパイヤといった果物も置かれている。どれも日本のコンビニやスーパーでは見かけないものばかりでおもしろい。「これだ、これだ」とアメ横で買ったものと同じシニガンスープの素を手に取って見ていると、声をかけられた。

「シニガンはフィリピン人にとって、日本人の味噌汁のように身近な料理なんですよ」

 振り向くと笑顔で立っていたのは石川アンナさん。首都・マニラ出身で店を経営する輸入会社「アナス・トレーディング」の副社長だ。ソウルフードを知りたいという私のお願いに快く応じてくれたアンナさんに、シニガンについて聞く。

「シニガンはタマリンドを使ったスープです。豚肉を水に入れて火をかけ、さらに大根やほうれん草、ナスなどの野菜を入れます。そこに塩、コショウなどの調味料とタマリンドの汁で味をつけてじっくり煮込む。入れる野菜は家庭によってさまざま。お肉も豚肉がポピュラーだけど、牛や鶏でもいいし、魚とかエビを入れることもありますよ」

 タマリンドはアフリカ原産とされるマメ科の植物。サヤのような殻の中にある果実はねっとりとして酸味が強く、料理やお菓子の味付けなどに使われる(甘みが強い種類もある)。疲労回復や整腸効果があり、古くから薬としても重用されてきたらしい。

「タマリンドは日本では手に入りにくいのでシニガンスープの素を使ったりするけれど、本当は茹でたタマリンドの果実をつぶして使うのが一番美味しい」とアンナさん。フィリピンでは毎日食べる人もいるほどなじみ深い料理だという。

大根、ほうれん草、シシトウなど野菜たっぷりのシニガン。店のシニガンは日本人でも食べやすいように酸味を押さえているそうだ
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