第150回 群れをはぐれた謎の幼虫、昆虫探偵が捜査

快便!ハバチの幼虫のおしりからウンチがころりん♪
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 さて、何を食べるかがわかった。でもハバチは、チョウやガの幼虫と比べると成虫まで飼育するのが難しい。もっと幼虫を見つけたいので捜査開始だ!

 まずは、幼虫が食べ始めたシダが生えている木へ。ハシゴを立てかけ、高所にあるシダを調べてみたが、食べ痕のようなものは見つかるものの幼虫は見当たらない。もうどこかでサナギになる準備をしているのかもしれないなと思いながら、ハシゴを降りようとすると、別の木の枯れた太い枝の先のほうに、別のアツイタシダが生えているのが目に入った。

 そこには何やらうごめくものが・・・目を大きく見開いた。 「おった~!おるやん!」2匹の幼虫がウロウロしている。そのシダはほとんどがかじり食べられていたので、幼虫たちは次の葉を探しているのだろう。

中央、葉の上に1匹、その下にもう1匹。幼虫は比較的速いスピードで移動している。
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 それは、同じアツイタ属のシダでも、葉がより分厚い種だった。「あんな分厚い葉のシダを食べるんや~」と心の中で繰り返しながら、カメラを取ってきてシダと幼虫を撮影し、何とか6匹の幼虫を採集した。

 飼育袋に入れて、最初の1匹とご対面。3日ぶりの再会だったのだろう。分厚いほうのアツイタシダの葉も袋のなかに追加しておいたら、どうやらそちらを好んで食べるようだ。無事に成虫(ハチ)になってくれることを願うばかりだ。

葉の裏には、幼虫がもう4匹いた!
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無事に袋の中へ。根っこや朽ちた木の枝の一部も一緒に。
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 今回の「事件」について、すぐにハバチの専門家と連絡を取ることができた。アツイタシダを食べるハバチの記録は、これが世界初だという。やはり、分厚くて硬い葉を食べるハバチも珍しいとのことだ。

 翌日、「みんな無事かな~」と袋内の幼虫の数を数えてみると、8匹だった。あれ?1匹増えているではないか。どこにいたのだろう?

 おかげさまで、この連載は第150回を迎えることができました。いつも、ありがとうございます! どうかみなさまにとって、安全で有意義な年末年始になりますように!

アツイタシダの葉の裏で休んでいる2匹の幼虫
Sawfly larvae resting
ハバチの「ハ」の字に見えたので撮影。このアツイタシダの葉は0.7ミリもあって分厚く硬い。写真右下、葉にかじった痕がある。この幼虫のアゴのつくりを、やわらかい葉を食べる他の種と比べてみるのもオモシロそうだ。
体長:約20 mm 撮影地:モンテベルデ
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西田賢司

西田賢司(にしだ けんじ)

1972年、大阪府生まれ。中学卒業後に米国へ渡り、大学で生物学を専攻する。1998年からコスタリカ大学で蝶や蛾の生態を主に研究。昆虫を見つける目のよさに定評があり、東南アジアやオーストラリア、中南米での調査も依頼される。現在は、コスタリカの大学や世界各国の研究機関から依頼を受けて、昆虫の調査やプロジェクトに携わっている。第5回「モンベル・チャレンジ・アワード」受賞。著書に『わっ! ヘンな虫 探検昆虫学者の珍虫ファイル』(徳間書店)など。
本人のホームページはhttp://www.kenjinishida.net/jp/indexjp.html