第133回 森の健康優良児、アグーチのアグちゃんの「刺激的」な行動

マダラアグーチ(哺乳綱:ネズミ目:アグーチ科)
Central American agouti, Dasyprocta punctata
地上を住処にしていて、主に早朝から夕暮れ時まで活動する。威嚇や警戒時は、グフォッグフォッグフォッと声を出す。
体長:約40~60 cm 撮影地:モンテベルデ、コスタリカ
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 10月半ばから12月初めまで、モンテベルデはドングリの季節だった。地面にたくさんのドングリが落ちていると、日本の秋から冬の始まりを感じさせてくれる。

 そんな季節のなか、家の周りのあちこちでうろちょろ、せわしなく動いていたのが、ピソちゃんに続くもう1種の「ご近所さん」、哺乳類のアグーチの「アグちゃん」だ。

 アグーチは、ネズミ目:テンジクネズミ上科:アグーチ科に分類されている。体長は40~60 cmほどで, 体重は約3 kg。見た目は、小さなカピバラ、大きなリスかネズミと言ったところ。

 アグーチの仲間は中南米に約15種生息していて、今回紹介する種は、マダラアグーチ(Dasyprocta punctata)。この種はメキシコ南部からエクアドルに分布していて、コスタリカでは海抜ゼロメートル地帯から標高2400メートルぐらいまでの林縁周辺でよく見かける。

地上に落ちた小さなヤシの実や、ドングリやグアバといった木の実、タネや果実が主食で、根っこや球根、あとちょっとした節足動物なども食べる。ぼくが家の前に土に還るように捨てる生ごみのジャガイモの皮や、バナナの皮、リンゴの芯も、たまにいただきにやってくる。
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「マダラ」模様の毛並み。ツヤツヤだ。
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「なぜマダラ?」と思われるかもしれないが、よく見ると細かいプツプツした点の模様があるので、たぶんそこから名前がついたのだろう。ぼくは、アグーチの「アグちゃん」と呼んでいる。ちなみに、しっぽが無いように見えるが、黒っぽい太くて短い釘(クギ)のようなのが、たまに見え隠れする。

 ぼくがアグちゃんの風貌で印象的な部分を挙げるとすると、2つある。まずそのツヤツヤとした毛並み。健康そうだ! そしてもうひとつは、ピンク色の耳だ。

アグちゃんの耳。真後ろから撮影。
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 アグちゃんの耳には毛があまり生えておらず、光を通すほど薄い。流れる血と太陽の光が、鮮やかなピンク色を浮かび上がらせているのだろう。ぼくがアグちゃんに出会った当初は、誰かが研究や調査のために、耳にピンク色の印をつけているのだろうと思っていたほどだ(笑)。

少し小さめ、まだ親離れして間もないアグーチ。 耳の色が森の中で鮮やかに浮かび上がる。花飾りでも着けているかのようだ。
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 さて、家の周りには2種のドングリの木(コナラ)があって、両方とも大木になるのだが、ドングリの大きさが1種は小さく(日本の一般的なドングリという感じ)、もう1種は大きい。特にいわゆる帽子の部分「殻斗(かくと)」が特大で、直径が5センチ近くにもなる。

コナラの1種(Quercus insignis)の特大のドングリの帽子。
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 じつは、地面に落ちているドングリは、ほとんどが「帽子」だけ。実の多くはピソちゃんやペッカリー(イノシシの仲間)など野生動物たちにあっと言う間に食べられてしまい、残っていないのである。アグちゃんもドングリが大好物で、ムシャムシャと食べているのを見かける。でも、それだけではない。アグちゃんはドングリを見つけたとき、他の動物がとらない「刺激的な」行動をとるのである。

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