第131回 細長いツノゼミ、ポリグリプタ

ポリグリプタの1種(カメムシ目:ツノゼミ科:Smilinae亜科)
A treehopper, Polyglypta costata complex, female guarding her eggs
葉の裏側の葉脈に産み込んだ卵を抱いているメス。ポリグリプタ・コスタタという種に似ているが、新種の可能性が高い。夜中、フラッシュを使って撮影。
体長:約10 mm 撮影地:サン・ホセ、コスタリカ
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 第129回で紹介した金平糖のようなアンティアンセツノゼミに次いで、最近モンテベルデでよく目にしているツノゼミを紹介しよう。ポリグリプタ属のツノゼミだ。

 また、ポリグリプタの形態や生態について修士論文を手がけた後輩が、ちょうどモンテベルデにやって来たので、鳴き声のファイルを借りました。どうぞお聴きください。

 ポリグリプタ属のツノゼミは中米から南米にかけて分布している。大きさはだいたい10ミリほどで、特徴は筋が入って前後が尖っている細長いツノだ。これまでに確認されている種のほとんどは黒いツノに黄色っぽい模様が入ったものだが、なかには青やエメラルドグリーンの模様をもつ種も見つかっている。ポリグリプタ属の分類は進んでおらず、専門家はまだまだ新種がたくさんいると言う。

最初の写真のメスを横から見たところ。ちょうどツノの先(前)から先(後ろ)までの範囲の葉脈に、卵が産み込まれている。ツノ全体で卵を守っている感じだ。
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 ぼくはこれまでにコスタリカで約10種のポリグリプタを確認していて、その全てがキク科の木々の葉の裏側を「住処」にしている。メスが卵を抱いていたり、たくさんの幼虫たちや、なりたての成虫が群れていたりする。ただし、アンティアンセツノゼミのようにアリたちがツノゼミの排泄する甘露にやって来ているのは、ポリグリプタでは見たことがない。

卵が孵化し、赤ちゃんたちが出始めているところ。母親がすぐそばで見守っている。
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 さて、上の写真で紹介したポリグリプタの種が、首都サン・ホセ近郊にあるコスタリカ大学のキャンパス内の別のキク科の植物に住んでいる。この種を観察していて一つ興味深いことを見つけた。(鳴き声はこちら→コスタリカ大学キャンパスに住むポリグリプタのオスの鳴き声(Copyright 2016, by Emilia Triana)

コスタリカ大学のキャンパスに住むポリグリプタの1種。成虫になったばかりの個体が3匹、葉脈に沿って「整列」している。
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 それは幼虫の擬態についてだ。この種が住むキク科の葉は比較的大きくて薄く、よくマダラテントウムシ(草食性)の仲間にスケスケになる感じにかじり食べられている。このポリグリプタの幼虫たちは、なんとその食べ痕に紛れ込むように住んでいるのだ。幼虫の色と模様は、食べ痕そっくり! ほかの虫がかじった後の葉が好みなのだろう。

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かじられた葉の裏に隠れるように住んでいるポリグリプタの終齢幼虫(写真中央)。右上が頭。
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羽化する直前のポリグリプタの終齢幼虫。葉の表面にやって来て、体を温め羽化するためのエネルギーを得ているのだろうか? 体長約10ミリ。
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