ツノゼミのトゲトゲ幼虫の抜け殻。真横からの接写。機能性の中にも芸術を感じる。
大きさ:約5 mm 撮影地:モンテベルデ、コスタリカ
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 今回の話の発端は、2014年の8月にさかのぼる。

 アメリカのワシントンDC、スミソニアン国立自然史博物館にあるマケイミー博士(Dr. Stuart Mckamey)の研究室におじゃましていたときのこと。ツノゼミの専門家である博士から、ある使命を授かった。ツノゼミの1種、ハイフィノエ・ラティフロンズ(Hyphinoe latifrons)の幼虫を採集し、飼育してほしいと言う。

ハイフィノエ・ラティフロンズ(Hyphinoe latifrons)ツノゼミの成虫。体長は約10 mm。
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 このツノゼミ、現在はハイフィノエ属(第117回第118回)に分類されているものの、実は別のグループではないかと博士は考えている。分類の見直しには幼虫の情報が欠かせないので、なんとかならないかというわけだ。

 ぼくはこれまでに2回ほど、コスタリカの家の周辺でこのツノゼミの成虫を確認していた。近所にいるのは間違いない。でも幼虫を探すとなると、大事な手がかりとなるのがその形態だ。博士に尋ねると、「おそらく茶色いトゲトゲをしている」と言う。

 あれ? トゲトゲの幼虫の抜け殻なら撮影したことがあるぞ。
 ぼくはPCに保存してあるその画像を探し当て、博士に見せてみた(冒頭の画像と次の画像2枚)。

トゲトゲ幼虫の抜け殻を正面から撮影したもの。
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「ワオ、これだよ、これ! キレイな写真だ。成虫まで育てたのかい?」

「いや、家の前のインガ・シエラエ(Inga sierrae:マメ科の木)の高いところの葉の裏についていたので、写真を撮っただけです」

「手の届く低い木々にもいるはずだ、探して飼育してくれよ!」

インガ・シエラエの枝葉には、ブラシのような茶色い毛がたくさん生えている。どう見てもこの植物に特化している装いの幼虫だ。
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