第148回 3年越し、謎のトゲトゲ幼虫を探せ!

・・・それから3年、ぼくは折に触れ、家の周りにあるインガ・シエラエの木々の手の届く範囲の枝葉をチェックしてきた。しかし、幼虫どころか、抜け殻さえ見つからない。見つかるのはそのツノゼミの幼虫に似た虫こぶだけだった(次の写真)。

ツノゼミの幼虫に似た、茶色いトゲトゲした虫こぶ。タマバエの1種によって葉の裏や葉脈に形成される。
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 2017年の5月、日本からケントくんという昆虫好きの高校生が、ぼくの元に修行にやって来た。1カ月間ぼくに弟子入りして、自然の中での生活や昆虫について学ぶ。いい機会なので、ケントくんと思いっきりトゲトゲ幼虫を探してみようと決心した。

 以前、抜け殻を見つけたのは木の高いところの枝の葉の裏。
 今回の調査は、高枝切りバサミも使って大胆に行こう!

 午前中、家周辺やバイオロジカルステーション敷地内のインガ・シエラエの木々をチェック。敷地の外も探してみるが、見つからない。午後になると雨が降り始めたが、隣の山の頂上へ向かう道を行くことにした。

 急斜面を30分ほど登っていくと、目の前に大きなインガ・シエラエの木が道の上にせり出すように枝葉を伸ばしていた。よし、ここを狙ってみよう! 

急斜面の道の上にせり出すように生えているインガ・シエラエの木。ケントくんが高枝切りバサミで枝を切っているところ。アシスタントがいると調査能力が高まる。
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 高枝切りバサミで枝先から1メートルほどの範囲を切り落としては、二人で目を通していく。ゾウムシやヨコバイなどたくさんの小さな昆虫たちは見つかるのだが、ツノゼミの幼虫は見当たらない。

 数本目、ついにツノゼミを見つけた! 幼虫でもなく、目当ての種でもなく、土のついたデコボコのサツマイモのような姿をした成虫(次の写真)で、枝に上手く擬態しているように見えた。この木と密接な関係にあるのかも、もしかしたら探している幼虫は成長したらこのツノゼミになるのでは?などと思いつつ、幼虫探しを続けることにした。

探していたのとは違うツノゼミ(成虫)が見つかった(矢印)。上から見たところ。大きさは7ミリ程度。
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 それからどれくらい探しただろう。もう見つからないのかな~と思っている矢先、葉っぱの付け根にそれらしき物体を見つけた。

「ん?え?これとちゃうん?」とケントくんに見せてみる。

葉の付け根の枝にいたトゲトゲ幼虫。わかりにくい!
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 次の瞬間、二人は目を大きく見開いて、互いに顔を見合わせた。
「おった~! これやでこれ!」
 二人は笑顔まみれになった。

 思い切って調査してやっと見つけた幼虫を、慎重に持ち帰って飼育だ。無事、成虫まで育てられるだろうか。果たしてハイフィノエ・ラティフロンズは現れるだろうか。

次回につづく

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枝に上手く溶け込んでいるトゲトゲ幼虫を真上から撮影。わかりにくいので、緑の丸を付けてみた(右)。
葉の裏にできた虫こぶの合間にいる、小さなトゲトゲ幼虫(矢印)。翌日の調査で見つけた。虫こぶ自体に擬態しているわけではないと思うが、虫こぶがあることで、捕食者の目から逃れやすくなる効果はありそうだ。
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西田賢司

西田賢司(にしだ けんじ)

1972年、大阪府生まれ。中学卒業後に米国へ渡り、大学で生物学を専攻する。1998年からコスタリカ大学で蝶や蛾の生態を主に研究。昆虫を見つける目のよさに定評があり、東南アジアやオーストラリア、中南米での調査も依頼される。現在は、コスタリカの大学や世界各国の研究機関から依頼を受けて、昆虫の調査やプロジェクトに携わっている。第5回「モンベル・チャレンジ・アワード」受賞。著書に『わっ! ヘンな虫 探検昆虫学者の珍虫ファイル』(徳間書店)など。
本人のホームページはhttp://www.kenjinishida.net/jp/indexjp.html