第146回 幽霊のようなクモと高層ビルに住むセミ

ユウレイグモの一種 (クモ綱:クモ目:ユウレイグモ科)
A pholcid daady long-legs spider on its nest
体長:約6 mm 撮影地:モンテベルデ、コスタリカ
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 今回は、写真で涼しさを少しでもお届けできたらと思います(今回紹介する予定だったビワハゴロモは別の機会に紹介します)。

 モンテベルデの我が家には、研究目的で飼育している昆虫たち以外に、いろんないきものが住んでいて、目にすることがある。その日は、床に置いてあったLEDセンサーライトが、ある生物を浮かび上がらせた。細い体に細長い脚が8本・・・ユウレイグモだ!

乾電池式LED センサーライトに照らされ、浮かび上がったユウレイグモの一種と巣の一部。写真では左側を向いていて、前脚が特に長いのがわかる。ユウレイグモの仲間は、倒木の下や大木の幹と張り出した根の間や、洞窟や建物内など、囲まれた薄暗い場所を好んで生息している。
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 ユウレイグモの特徴である「雑で不規則な巣」のほぼ中央に、逆さになって獲物を待っている。下から照らされてたたずむ姿が、ちょうど幽霊っぽい。

 そっと近づきながら撮影していくも、カメラが巣に触れてしまった! 次の瞬間、クモは巣の端っこに移動していた。細長く弱々しい体つきとは似合わず、動きは俊敏だ。

 観察していて興味深かったことが二つある。

 一つは、このクモの巣にホコリがそれほどくっついていないこと。一般的なクモの巣はネバネバしているのでホコリがたっぷりくっついている。不思議に思って文献を調べてみると、ユウレイグモの多くは、粘着性のない巣を張るそうだ。なるほど! だから、ホコリがくっつかないのだろう。

上で紹介したユウレイグモと同じ種。触肢(しょくし)でくわえているのは、卵嚢(らんのう)と呼ばれる糸で包まれた数十個の卵。お母さんグモは、子グモたちが孵るまで、大切にくわえている。卵嚢を強調するため、紫がかった卵嚢以外は、写真をグレースケールにして加工。
体長:約8 mm 卵嚢の大きさ:約4 mm 撮影地:モンテベルデ、コスタリカ
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 もう一つ、興味深かったのは、ユウレイグモが危険を察知したときの行動だ。サッと巣の隅へ逃げる場合と、長い脚で巣をワワワワワッサワッサと振動させる場合がある。自身の体ごと巣を揺らすため、このクモの細長い体が見えにくくなるのだ。これは、体形の似ている脚の長いほかの虫たち、ガガンボやザトウムシが体を揺らす行動に似ている。

 姿を消すようなこの動き、薄暗い生息場所、細く弱々しい姿。どれをとっても、ユウレイグモとは絶妙な命名だなあと納得。ちなみに英語では「あしながおじさんグモ」や「ザトウムシグモ」、「ガガンボグモ」と呼ばれている。

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スメリンゴプス・パリドゥス(クモ綱:クモ目:ユウレイグモ科)
a pholcid daady long-legs spider, Smeringopus pallidus
近年、コスタリカや熱帯地域では、アフリカ原産のクモが屋内で増えつつある。写真のクモはユウレイグモモドキ属の1種で、脚の長さが体の7倍以上もある。ユウレイグモモドキと呼ばれているが、ユウレイグモの仲間である。ややこしい。
体長:約7 mm 撮影地:首都サン・ホセ近郊、コスタリカ
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